もちろん、燃費やエネルギー収支の向上だけでは、量的な解決が全きものになることはなさそうではあります。

やはり、バイオ燃料の「土地の単位面積あたり生産性」をあまりエネルギー投入を増加させずに向上させる必要がありそうです。

これについては、バイオテクノロジーがいずれ解決するだろう、と私は考えています。

そのうちに、別のブログテーマで論じようと思っていますが、ここである程度論じることにします。

#70で述べましたが、「システム生物学」という学問分野があります。非常に新しい分野です。おそらくここ3~4年程の間に始まった分野です。

システム生物学は、「生物を、遺伝子/細胞内器官/細胞/組織/器官/(一個の)生体、の各レベルにおける生化学反応の連鎖全体を、網羅的に統合的に捉える」ことを目指している学問分野です。

皆さんも、「 ~ の遺伝子が解読された」という報道は、ときどき目にされていると思います。ヒトゲノムなんかそうですし、イネもほぼ解読されているようです。

しかし実は、そこからが大変なのです。現状、バイオテクノロジーの研究者達は、

「遺伝子それ自体(の塩基配列)は解読できた。しかし、どの遺伝子がどのようにして生命現象を発現しているのか、その詳細はほとんど分からない」

という状態に置かれています。

生命現象がどのように発現しているのかを知るには、上記の「遺伝子/細胞内器官/細胞/組織/器官/(一個の)生体」の各レベルにおいて、生化学反応がどのように発現し、どのように連鎖していくのか、その全体像を把握する必要があるのです。

この「連鎖全体を網羅的に捉える」ことは以前は不可能でした。

電子顕微鏡があるじゃないかって? 確かにそうですが、電子顕微鏡は生きた細胞の観察はできません。対象を真空中に置く必要があるので、死んだ細胞しか観察できないのです。

「生きた細胞の中で起こりつつある化学反応の連鎖を、部分部分の動きから全体的な流れまで網羅して観察できないか」

これが研究者達の願いでした。

そして現在、技術・エンジニアリングの進歩により、これが可能になりつつあります。それも1分子レベルで。

このことが今後10年20年の間に「生命現象がどのように発現しているのか」に関する知見を劇的に増加させるだろう、と私は考えています。また、「このことが、生体を人工的に設計して望む機能を持たせることを、将来可能にするだろう」と考えています。

ですから、限られた土地面積の中において、或は乾燥地や寒冷地など植物にとって悪条件の多い土地においてすら、バイオ燃料の増産が将来可能になるだろう、と考えています。

以前はそう思ってはいませんでした。しかし、バイオテクノロジーについてあれこれ調べた結果、今はこう考えています。