量の不足だけでなく、質の悪化についても、改善が見込めると私は考えています。

自動車とバイオ燃料について考えて見ましょう。

仮に農場で燃料作物、例えばサトウキビを生産したとします。

広い広い面積の農場のあちこちで収穫したサトウキビを精製工場へと運ぶわけです。

収穫機とトラックが燃料を消費しますね。エネルギー収支悪化要因です。

でも、ちょっと考えてみてください。将来は自動車の燃費が改善するんじゃなかったでしたっけ?

収穫機だって、一種の自動車です。これも燃費改善の余地があるのではないでしょうか。

実際、ハイブリッド車の構造を考えてみると、農機や建機には燃費改善の余地が相当あるだろうことを推定できます。

自動車が走るとき、特に市街地を走ると、頻繁にブレーキをかけてスピードを落とし停止します。停止後また発進し加速していきます。

この「ブレーキをかけてスピードを落とし停止する」というプロセスは、「旅客や貨物を運ぶ」という本来の機能を考えると無駄な動作です。

この無駄があるために、ブレーキをかけなければ本来必要が無いはずの「停止後また発進し加速する」という無駄なプロセスをもう一段階踏む必要が出るわけです。

この最初の無駄なプロセス - ブレーキをかけてスピードを落とし停止する - の間にモーターを回して発電・充電し、その充電した電力を2段階目の無駄なプロセス - 停止後また発進し加速する - の際に消費するのが、ハイブリッドシステムの基本コンセプトです。

建設機械や農業機械にも、無駄な動作が必ずあるはずです。それが多ければ多いほど、燃費向上の余地は増えます。実際、建設機械については、そういう「無駄な動作を利用した充電機構」の研究開発がすでに始まっている旨、新聞で読んだ記憶があります。

この燃費向上の余地を人々が埋めようとするとき、バイオ燃料生産に投入しなければならないエネルギー - EROEI のうちの後半 - "energy invested" - を結構減らせるのではないか、と私は考えています。投入するエネルギーの少なからぬ部分は、輸送・物流に投じられていますから。

ここにも希望がありそうです。

とりあえず、「省エネ化はエネルギー収支を向上させる」というテーゼを掲げておきましょう。このことについては、後ほど再び考えてみることにします。