「節約の方法論を考えることとは別に、そもそも自動車への依存度を今のまま維持するのか下げるのか」について検討することが、「真の問題」のうちの1つだと申しました。

前述しましたように、自動車は分散化された輸送手段です。鉄道のように集約化された輸送手段より燃費は悪いわけです。

しかし、分散化されているために、

・旅客や荷物を小分けにし、様々な目的地別に向けて別々に輸送すること

・旅客や荷物を小分けにし、時間差をつけて別々に配送すること

が可能になっています。鉄道や船舶は、この点に関する自由度がずっと低いです。

特に鉄道には、敷設した線路上しか走れない、という重大な制約があります。もちろん線路だけでなく、車両にエネルギーを供給する設備 - 変電所や架線や燃料タンク - なども必要で、それにアクセスできない場所では列車は走れません。

自動車も、舗装した道路上しか普通は走りませんし、ガソリンスタンドが全く無い地域では短時間しか走れませんが、鉄道ほど厳しい制約でないことは明らかですね。

それに道路は、各家庭の目の前まで続いています。"Door-to-door" が実現できるわけです。

おまけに、自家用車なら、見知らぬ他人と行動を共にする必要がありません。

鉄道と大型船舶などの公共交通機関にはこういう自由度はありませんね。

ですから、「鉄道や船舶への依存度を政策的に上げよう」と政治家が意図することは、人々の生活の自由度を下げることに直結します。

そう簡単には立法化されないでしょうね。

でも、エネルギー危機が来たら、話は別です。

また、これは二酸化炭素排出量削減を意図した自発的な動きですが、一部の企業 - トヨタ自動車が特に熱心なようです - は「モーダルシフト」と呼ばれる、「鉄道や船舶による商品や部品・資材の輸送を優先的に選択する」ことを実施し始めています。

こういうのを参考にして政策化される日がいずれは来るかもしれない、と私は考えています。繰り返しますが、「先にエネルギー危機が来て、後から政策化される」というのが、私が想定している事態です。