前掲書の著者、静岡理工科大学の矢田浩名誉教授は、鉄を撒布するにあたって、以下のような提言をしています。
(1) 撒布する鉄には産業廃棄物を充てればよい。アルミニウム精錬業や製鉄業から出る廃棄物が考えられる。
(2) 例えば、アルミニウムの原料たる鉱石「ボーキサイト」は12~16%の酸化鉄を含む。ボーキサイトを精錬してアルミナ(酸化アルミニウム)を除いた残渣(赤泥)は現状厄介者で海洋に「不法投棄」されているが、これは鉄を豊富に含む(だから赤い)上にアルミナは水に溶けず、アルミニウム以外の成分は毒性の心配はないので、鉄撒布に使える。
(3) 全世界で年間約2000万トンのアルミニウム地金が生産されており、その2.2倍の重量(4400万トン)のボーキサイトが消費されている。その量のボーキサイトに含まれる鉄の量は400万トンを超える。
(4) マーティンの計算では、南極海で不足している鉄の量は「たった30万トン」に過ぎない。上記(3)で理論上得られる鉄の量よりはるかに少ない。
(5) 日本鉄鋼協会の試算では、日本で1年間に高炉から排出される残渣(スラグ)1000万トンのうちの8%を海に撒布すれば、日本の鉄鋼業界に要求されている二酸化炭素削減量1700万トンを達成できる。
矢田先生は、「地球温暖化対策としては、鉄の海洋撒布だけが、間に合う対策である」と書いています。
提言内容で「大気中の二酸化炭素濃度を低下させられる」ほどの効果を発現できるのかどうか、私としてはまだ定かではありませんが、そこまで行けるのなら素晴らしい話ですね。
鮪の数も増えそうですしね。