少し古いのですが、1990年代半ばの資料や2000年頃の資料から、化石燃料系液体燃料と蓄電池のエネルギー密度の大体の水準を調べることができました。

(重量エネルギー密度)
 化石燃料系液体燃料: 10,000 kcal/kg
 蓄電池      : >30 kcal/kg

(体積エネルギー密度)
 化石燃料系液体燃料: 4~10 kWh/liter
 蓄電池      : 0.04~1 kWh/liter

熱量を示す単位が kcal と kWh と異なっていて比較しにくいですが、無視してください。

要は、「炭化水素によるエネルギー貯蔵」と「電気エネルギーを化学エネルギーに転換して行うエネルギー貯蔵」との間に、桁の違うものすごい差がある、ということが分かっていただければここでは十分です。

資料が出た時点から6~10年経過していますので、今は蓄電池の性能がもっとよくなっているでしょう。

しかし、どう比較しようが、すごい差です。電池は全くかないません。

桁が違いますからね。そう簡単に差は埋まらないですよ。

石油系燃料を使うほうが、「より速く走れる自動車・より遠くまで走れる自動車・車内スペースをより広くとれる自動車・より強度の高い事故に耐えられる自動車」を作りやすいわけです。

現在では、蓄電池の主流は高性能のリチウムイオン電池になりつつあります。ハイブリッド車もリチウムイオン電池を使うことが多いです。また、ニッケル水素電池もまだ使われています。旧来の鉛蓄電池は次第に減ってきています。

しかし、いずれの電池を使おうが、ガソリンや軽油にエネルギー密度で負けている状況は基本的に変わっていません。

電気自動車でなく、ハイブリッド車が先に実用化されたのも、前述したインフラ面の理由もあると思いますが、エネルギー密度の面からも納得できると私は考えています。

ナトリウム硫黄電池も実用化されつつあります。この電池は現在実用化可能となっている蓄電池の中では最もエネルギー密度が高い部類に属します。残念ながら作動温度が高く(350℃くらい)乗用車よりも大きな機械になってしまいますので、自動車に積載できません。風力発電所に併設する電圧平準化用設備として導入されようとしています。(これはこれで重要だと思いますけどね)