電力供給が始まったらそれでメデタシメデタシかというと、そうでもありません。
しばらくはいいんですけどね。
どんな機械、設備でも、保守点検それに修理が必要です。
大型の水力発電所を保守点検修理する、というのは、高層ビルのような大きな建造物を保守点検・修理するってことです。
自家用車の修理とは違うんですよ。
特に問題になるのは、ダム本体のコンクリートが劣化してきた場合の補修でしょうね。「補修」と名がついているとちょこちょこっと作業するように思われるかもしれませんが、実際には再び建設工事をするようなものです。もちろん、そうそうめったにあることではありませんし、工事の規模も最初に更地に建てるよりははるかに小さいでしょうけど。
最初の建設工事に比べてずっと少ないとはいえ、また石油を使うことになります。
せき止めた河川に土砂が堆積してくるのも大きな問題です。ダムがせき止めてできた湖が、次第に埋まってくるわけです。
ダムがせき止めてできた湖が、幸い巨大な湖であれば、土砂の堆積が問題化するまでの時間をかなり稼げます。そういう場所はまだ良いのですが、日本に多くあるような比較的小型のダムですと、20年くらい経つと問題化したりすることがあります。
中国の黄河に建設されたダムなんかでは、事態は深刻だそうです。
土砂が堆積し過ぎないよう時々浚渫しなければなりません。浚渫にまた石油を使います。
浚渫した土砂をどこかに廃棄処分しなければなりませんから、トラックか何かで土砂を輸送することになります。また石油を使います。
もっとも、ダムの構造によっては、溜まった土砂を洗い流せる構造になっていることもあります。上述した黄河にかかるダムでは、こういう構造が最初から組み込まれています。こういう場合は、土砂の処分にあたって石油の消費はわずかで済むでしょう。
もっとも、下流に土砂を流すことの影響に注意を払う必要は出ます。洪水の危険性が上がりますから。
ここで一つおたずねします。
下流に土砂を流すことによって土砂災害の危険性を高めることと、化石燃料を浪費することと、あなたならどっちを取りますか?
これって結構本質を突いている問いかけだと思いますよ、私は。エネルギーを人間が使うのは、人間の生活を便利で快適にするためなんですから。災害防止の努力も「人間の生活を便利で快適にする努力」の一環でしょう?
そういう尊い努力も、見方によっては「エネルギーの浪費」かもしれないわけです。