前回「生活における『全て』が化石燃料に依存している」と書きました。
この「全て」という表現は決して誇張ではありません。
例を挙げてみましょう。
朝起きたとき、洗面台で顔を洗いますね。そのとき、たとえ洗面所の電球を灯さなかったとしても、湯でなく冷たい水で顔を洗ったとしても、あなたは間接的ではありますが化石燃料に依存しています。
上水道はポンプで圧力をかけてあるからです。ポンプの動力源は電気エネルギーです。
電気エネルギーは火力発電所・原子力発電所・水力発電所・風力発電所などで生産されます。
火力発電所なら、間違いなく化石燃料のお世話になってますね。
原発は一見化石燃料のお世話になっていないように見えますが、そうでもありません。今のところ化石燃料の供給が全く無い世界で機能する核燃料サイクルは存在しません。
まずウラン鉱石を採掘しなければなりませんね。採掘する時点でパワーショベルなどの道具を使用し、石油を消費しています。
採掘した鉱石を精錬します。精錬所を稼動させる時点で化石燃料を消費しています。
例えばカナダで鉱石が採掘されたとします。
普通は一旦フランスで精錬しますから、カナダからフランスに鉱石を輸送することになります。船が石油を燃料として消費してしまいますね。
フランスでウラン燃料を精錬したとして、それを日本まで運ぶのにまた船を使います。また石油を消費します。
船が日本に着いたら、港で荷揚げします。クレーンを使ったら、直接か間接かは別にして、また石油を消費します。
陸揚げしたウラン燃料を加工して燃料棒を製造します。また石油を消費します。
燃料棒を原子炉に組み込みます。機械を動かすのでまた石油を消費します。
原子力発電所ではたくさんの作業員が働きます。彼らは放射線防護服を着ています。防護服の素材には石油由来のものが当然使われています。ここでも石油を消費してしまってますね。
そもそも、その燃料棒を組み込む原子炉を建設する時点で建設機械や資材輸送用の自動車などを動かすのに石油を消費しています。
それらの建設機械や建設用資材を製造する時点でも石油を消費しています。また製造された建設機械や建設用資材を原発の工事現場に運搬するのにも石油を消費しています。
なんだか気が遠くなってきましたね。もう少し我慢してください。
原子炉が稼動し、燃料棒が古くなったら、燃料棒を取り出し、再処理工場に運びます。また石油を消費します。
再処理工場で再処理し、使えるウラン235やプルトニウム239を抽出します。また石油を消費します。
色々な事柄が連鎖して複雑になってきましたね。そうなんです。エネルギーの供給と消費は社会のあらゆるレベルにまたがっていて、大変複雑な連鎖が出来上がっています。
私自身、この2月から真剣に調査し始めましたが、調査すればするほど、その連鎖が膨大で、実に様々なことを検討しなければならないことに改めて気づかされています。
このまま話を続けると膨大になってしまいますので、とりあえず原発の話はこのあたりで切り上げて、水力発電に移りましょう。