New Sinology 以来お付き合いいただいている方々は、私が FT.com を読んでいることをご存知だろうと思います。

私が見ている限り、Financial Times はハバートのピーク/石油の減退についてこれまで不明確な態度をとってきています。ちょうど今の日経のような態度だったと思います。記事にその言葉を書いてこなかったのです。

ですから、Financial Times の記事はここではこれまで取り上げてきていません。(バイオ燃料記事を他の情報源に依存したことも大きな理由ですが)

個別の記事を一つ一つつなげて、この Terminal Decline 連載でインドネシアについてやったような作業をやれば、Financial Times の記事を引用することもこのブログ上でできたかもしれませんが、そこまではしませんでした。

しかし、今週ようやく、ハバートのピークについて取り上げている記事を見つけました。

FT.com 10月23日記事 "An unsustainable outlook"
http://www.ft.com/cms/s/aca55fda-6059-11db-a716-0000779e2340.html

特に注目すべきは、このくだりでしょう。

(Quote) This year, Saudi Arabia, which says it holds 260bn barrels of oil and the potential of another 200bn, will have 90 operating drilling rigs. That is twice as many as in 2004 and three times as many as in the previous decade. (Unquote)

#58で、アラムコが4月に「既存の油井は年率8%で減産中。新規に掘削する油井による増産と合わせた合成値は、年率2%の減産」と発表したと書きました。

同じ油層に対して新規に油井を掘削して増産し、既存油井の減産の影響を緩和することそれ自体は、普通に行われていることです。

問題は、生産量が増えるわけでもないのに油井を掘削する箇所の数が急激に増える、ということです。これは油田が減退しつつある兆候です。(Financial Times の Hoyos記者が、このことを知らないはずはない、と私は思います)

増産どころか、先週のOPEC緊急会合で減産をきめてしまいましたし。日本の石油会社にも、供給量削減を通知してきていますし。減産を決めたのは定例の会合ではなく「緊急の会合」ですし。