・沙漠に太陽電池パネルを敷きつめる
・沙漠で耐乾性の強い植物を栽培し収穫する

どちらがより現実的か、あるいは効率的か、を考える前に、まずこの比較がどれくらい妥当かについて考えようと思います。

「こういったことをする目的」について考える、と表現しても構いません。

太陽電池を設置して得られるものは電気エネルギーです。電気エネルギーは、「人間が作った人工的な道具の動力源」です。

人間自身は電気エネルギーをエネルギー源にすることができません。電気は食べられません。

また、人間が使う道具そのものを構成する素材とすることも、電気エネルギーにはできません。電気を直接衣服の繊維や歯ブラシの柄にするわけにはいきません。電気は手に持つことができる「モノ」ではありません。

言い換えますと、「太陽電池で発電することは、衣食住を便利にする手段ではあるが、衣食住そのものを供給してくれるわけではない」ということです。

植物 - バイオマス - は電気と全然違いますね。

バイオマスと呼ばれるものの一部は我々が食べている食料そのものです。また、現在では食べられないバイオマスから食料を生産することが技術的に可能になりつつあることは前述しました。

衣服や生活で使う道具の多くを、前近代社会の人間はバイオマスから生産していました。木材や竹、稲わらなどを材料として、色々な道具を作っていたわけです。もちろん、金属やセラミックスもある程度は使っていましたが、現代とは比較にならないほど少量しか使っていなかったわけです。

バイオマスを液体燃料に転換すれば、「衣食住を便利にする手段 - 人工的な道具の動力源」とすることも可能です。バイオエタノールはまさにそういう存在です。

ですから、太陽電池をしきつめることと、緑化することと、無条件に同列に考えられるはずはないと私は考えています。目的を明確にして始めて比較する意味が出てくると思います。

もし、人工物(機械・道具)の動力源を得るのが目的なら、太陽電池も緑化もどちらも解決策たり得ます。この場合は、「どちらがより技術的に実現可能性が高いか? どちらがより経済効率が高いか?」という質問が成立し得ると思います。

もし、衣食住につかう素材そのものを得ることも目的に含めるのなら、片方しか選択しないのであれば、緑化しか選択肢になりません。

ちなみに、「片方だけ選択する」ことは、私から見るとそれほど不思議な仮定ではありません。インフラ整備を単純化したければ、片方だけ選択する方が良いからです。