参照:
・日経朝刊 9月13日(水) p11
・日経産業 9月21日(木) p16
・日経朝刊 10月17日(火) p13
面白い食い違いがあるんですよね。
環境省と農林水産省は、エタノールをガソリンに混合しようと考えています。
経済産業省と石油業界は、エタノールをETBE(エチル・ターシャリー・ブチル・エーテル)という物質に加工し、そのETBEをガソリンに混合することを薦めています。
バイオマスからのエタノールの生産は、国内ではおそらく十分な量にはなかなか達しません。ガソリンに当面は3%、長期的には10%混ぜるのが目標になっていますが、かなりの量、おそらく当面は大部分をブラジルなどから輸入するはずです。
輸入したエタノールをガソリンに混合するにあたって、経済産業省と石油業界は一旦加工しろ、と言うわけです。その理由として、「現行のガソリン用自動車に積載して腐食を引き起こす可能性がエタノールにはある」ということや、「エタノールに混合した水が車内で凍りつく可能性があること」などが挙げられています。
環境省などは「10%程度までは大丈夫」と言っています。
エタノールが腐食性の物質であることや、水とエタノールが一旦混ざると分離しにくいことそれ自体は本当です。
しかし現実には、日本国外ではエタノールを5~15%程度混ぜたガソリンを給油したガソリン車がたくさん走っているようです。
これは個人的な意見ですが、日本の石油会社(精製業・元売り)は売上数量の減少を恐れていると私は見ています。
エタノールを外国から輸入してガソリンに混ぜるにあたって、別に製油所で混ぜる必要はありません。現状の流れですと、エタノールを輸入する企業はおそらく三井物産などの商社です。そうしますと、商社が石油元売りをすっ飛ばして卸売り業者・小売業者と直接取引し、エタノールをガソリンに混ぜてしまう可能性があります。商社自身がエタノールをガソリンに混合する設備を自前で建設するかもしれません。
そうすると、石油元売りとしては、「ガソリンの出荷量が減り、その減少分の販売過程には与れない。おまけに製油所の稼働率が下がる」という状況が生まれます。
日本国内ではガソリンの販売量(販売金額ではなく、量)は横這いです。緩やかな人口減少が予想されていますから、これは危機的だと石油業界(元売り)が思っても不思議ではありません。
エタノールをETBEに加工するのなら、製油所にエタノールを一旦運び込み、そこで加工することになります。元売りが関与する余地が生まれるわけです。
10月17日(火)の日経朝刊17面の記事は、こういった事情をにじませています。
北海道の農協グループが、バイオエタノール工場とガソリンにエタノールを混合する工場と、2種類の工場を自前で建てようとしている、という内容の記事です。しかも、その生産物「E3」(ガソリン97%、エタノール3%の混合燃料)を農協系のガソリンスタンドで販売することを目指している、と書いてあります。
#130で述べましたように、農林水産省は農協系のガソリンスタンドでのバイオエタノール販売を検討しています。早くも具体化へ向けて進んでいるわけですね。