エネルギー省の報告書を読み進むにつれ、私は次第に「あぁ、アメリカ人て、やっぱりもったいないことを考える連中だな」と思うようになりました。

空飛ぶ円盤でも発明されればともかく、飛行機に液体燃料を使うのはまあ仕方ありません。

地上・水上を走る機械は、なんとか液体燃料なしですませられないだろうか? と私は思います。

液体燃料は一度燃やしたらそれで終わりです。エタノールをエンジンで燃焼させれば、せっかく植物が固定してくれた炭素が大気中にまた拡散してしまいます。

食糧だって食べたら終わりじゃないか、という意見もあるかもしれませんが、私は食糧と燃料を同列に考える気にはなれません。また、汚い話ですが、排泄物を肥料として再生産にまわすことが、ある程度可能です。

つまり、バイオ燃料開発にあたっては、長期的には土壌劣化という問題も考えられるということです。

製造工程である程度工夫できるのかもしれませんが、燃料をエンジンで燃焼させることが前提である限り、燃料作物が地中から吸い上げた養分(鉄・リン・カルシウム・マグネシウム・コバルト・亜鉛などのイオン)を土壌に戻すサイクルを作るのは難しそうに私は思います。

バイオマスを食糧生産に回すのであれば、また化成品をリサイクルするのであれば、少なくともある程度は吸い上げたイオンを土壌に戻すことができ、また土壌から奪うイオンの量を比較的限定できそうに思います。

そう考えてくると、「食糧生産と化成品製造のためにバイオマスはとっておいて、自動車・船舶・建設機械など動く機械の動力源は別に考える方が望ましい方向性なのではないか?」と私は考えるようになりました。

私の思うに、風力、太陽光、波力、水力、地熱など(原子力の利用もある程度やむを得なさそうです)で電気エネルギーを生産し、それを「動く機械」の動力源とできるのが一番望ましいと思います。

「せめて『燃料-食糧-化製品製造コンプレックス』のようなコンセプトの製造業を実現できないだろうか? その上で、電気エネルギーと液体燃料を併用する社会を構成できないか?」と思います。

これには、今のところ重大な問題があります。電気エネルギーの「貯蔵・搬送・積載」です。電気エネルギーを効率良く「貯蔵・搬送・積載」するのは、液体燃料をそうするよりずっと難しいのです。

また、電気エネルギーの源となる自然エネルギーが「広く薄く分散しており、かつ間欠的(例えば太陽電池は夜間や曇りの日は発電できない)」という傾向を持っているのも、やっかいな点です。

このことも含めて、エネルギー不足に対処する将来の社会像について、私は自分なりにある程度考えてはいます。科学者でも技術者でも政治家でもSF作家でもありませんので、考えたところでどうということもないのですが、この連載「エネルギー省」シリーズが終えてから書こうと思います。

forever2xxxさんからもご要望を頂いてますし。

もちろん、当分の間バイオ燃料を自動車の燃料として使うのはやむを得ないだろう、とは思っています。