エネルギー省の報告書 "Breaking the Biological Barriers to Cellulosic Ethanol: A Research Roadmap Resulting from the Biomass to Biofuels Workshop" を読んで、私は以下6つの点に思いあたりました。

(1) この技術は食糧生産に使える。これまで人間が栄養源とできなかった植物の繊維質を栄養源として利用できることを意味している。

(2) この技術は化学工業の基礎にもなり得る。これまで化石燃料系炭化水素を原料としていた化学工業を、再生可能な原料を基礎とする化学工業体系に置き換えることが可能になり、また生産に投入するエネルギー量を減少させることができる。

(3) 当面バイオマスを液体燃料全般の原料とするのはやむを得なさそうだし、また長期的に航空燃料だけは別だが、自動車と船舶と発電の動力源はできるだけ別のもので置き換えるのを目指し、バイオマスは食糧生産と化学工業に投入する方が、今後の研究開発全般の方向性としてあるべきものではないだろうか? 或は、せめて「燃料-食糧-化成品製造コンプレックス」のようなコンセプトにもっていけないだろうか? 液体燃料製造だけのためにバイオマスを消費するのはもったいな過ぎる。

(4) この技術が発展して食糧生産と化学工業原料に利用できるようになれば、生産活動のキモは「一定時間内、一定面積内のバイオマス生産量を最大化すること」に集約されてくる。すなわち、「一定時間内、一定面積内における光合成量を最大化すること」が重要になる。必ずしも、利用する植物体が大きければ良いわけではない。ひょっとしたら植物プランクトンの方がバイオマス生産に適しているのかもしれない。地上でのバイオマス生産だけでなく、水中での生産にも目を向けた方が良い。

(5) いずれにせよ、「大量の水」と「太陽光線が豊富に降り注ぐ広大な面積」が必要になる。それをどこで入手するかを考えなければならない。

(6) もう一つの考え方は、「これまで光合成がさかんでなかった地球の表面で光合成量を新たに増やすのが、地上のバイオマス量のネット増加に最も貢献する」というもの。熱帯雨林を破壊してエネルギー作物を栽培するのと沙漠/半沙漠草原地帯でエネルギー作物を栽培するのとを比較する場合、生物圏(biosphere)全体でのバイオマス量のネット増加は後者の方が大きい可能性がある。