Terminal Decline (1) ~ (10) から私が理解したこと、および推定していること、を以下に列挙していきます。


(1) 8月の石油生産量が日量86万バレル。これは1996年の平均値の56%。すなわち約半分で、1990年代半ば以来石油生産量の減少傾向は止まる気配を今のところ見せていない。早期ピークオイル論者が言うように、一旦ピークアウトした後の減少は急激である。


(2) 今後開発を期待できる同国最大級油田 - チェプ油田 - は日量16万バレル級。ということは1996年以来の減少傾向を食い止めるには程遠い産出量でしかない。仮にチェプ油田級の油田があと2箇所あったとしても、1996年以来の減少を補うには足りない。1996年のピーク生産量を回復できる見込みはほとんど無いと考えなければならない。

※ 一般化して言うと、ピークオイル論者が言うように、一旦ピークアウトすると二度とピーク生産量を回復できない。長い目で見て、あとは減っていく一方である。


(3) 石油輸出国が輸入国に転じると、経済に重大な影響を与え得る。#103の2つの記事に見るように物価の大幅上昇が国内経済を直撃する。

※ 全世界規模で石油産出量がピークアウトする場合、全世界規模で物価大幅上昇・経済成長鈍化(マイナス成長の可能性高し)が予想されることを意味している。


(4) 検算: 報道では2004年に石油純輸入国となったとある。世界国勢図会 2005/06 および 2006/07 によるとインドネシアの原油自給率は以下のように変遷している。

2001年  130.7%
2002年  117.3%
2003年  110.4%

自給率 = 原油および石油製品の輸出量の原油換算量 ÷ 石油製品の国内消費量の原油換算量

上記の自給率と#106の石油生産量の統計とから、2001~2003年の国内消費量を推定することができる。

2001年の国内消費量 = 日量134万バレル ÷ 130.7% = 日量102万5000バレル
2002年の国内消費量 = 日量124万9000バレル ÷ 117.3% = 日量106万5000バレル
2003年の国内消費量 = 日量115万1000バレル ÷ 110.4% = 日量104万6000バレル

国内消費量がだいたい一定なので、仮に2004年も国内消費量が日量105万バレル程度であると仮定すると、

2004年の自給率 = 日量109万5000バレル ÷ 日量105万バレル = 104.3%

年間の平均値としてはぎりぎり自給できているように見える。しかし、あくまで平均値なので、年の途中から輸入が輸出を上回ったと見ることは十分可能。また、国内消費量が2004年に増えれば、簡単に輸出を輸入が上回った可能性が高い。

以上、報道内容に矛盾しない検算結果を得ることができた。