前回#55では input < output となれば... とあっさり書きました。

書くのは簡単ですが、実際に計算するのは大変だと思います。特に input 側を把握するのは難しいと思います。世に出回っている試算は推定に頼っている可能性が十分にあると思います。

また、output 側も、多くの場合は副産物を考慮していないと思われるのですが、ブラジルでのさとうきびからのエタノール生産については、副産物としての電力を考慮して計算していると思われる場合があります。

#54で述べた、農畜産業振興機構の数値は、さとうきびの搾りかす(バガス)を燃料にする火力発電によって得られる電気エネルギーを output に含めていると私は考えています。同機構のHPにも明確に書いていないので、はっきりしたことは言えないのですが、文脈からそう解釈しています。

さて、そうすると、「エネルギー収支」の作物ごとの比較を見かけても、さとうきびは「エネルギー収支」が良い/悪い、或いはてんさいはどうの、と単純に論じられるかどうか、本当はすぐには分からないわけです。

ある試算数値を見ても、例えば「工場で農業機械を製造するのに必要なエネルギー input を加味した計算なのかどうか」については、ほとんどの場合わかりません。前提条件を付記していないことが多いからです。

「エタノール工場からガソリンスタンドまでエタノールを運ぶ距離が、地域によって相当異なるであろう」ということなども、単純な比較の危険性を上げています。

実はそうなんです。ネット上で出回っている「エネルギー収支」に関する試算数値は、多くの場合、その試算の前提条件を付記していません。