アメリカは以下のような戦略を立て実行に移しつつある、とmattは仮説を立てている。

仮説1:中東・ロシア(特にカスピ海)の石油をユーロ建で輸出させることを阻止する。
仮説2:日本にアジア太平洋諸国をまとめさせ、さらに大規模にドルを買い支え続けさせる。

ここのテーマ"US戦略(西)"では仮説1についてシナリオを説明していく。仮説2については、テーマ"US戦略(東)"扱いにて今後述べていく。

-------------------

仮説1の前提:

(a) 原油輸出入代金をユーロ建で決済しようとした最初の国はイラクである。(2000年)
(b) その後、イランと北朝鮮がユーロ建で決済すると宣言した。
(c) サウジアラビア等、他の石油輸出国にも同様の動きが飛び火しつつある。
(d) ユーロ建で決済する動きが広まると、ドル建で石油を輸入できなくなってしまい、アメリカ経済に重大な支障を生じかねない。そこでイラクの動きを潰すことにし、9・11を機にイラクを占領し、ユーロ建輸出をやめさせた。

仮説1シナリオ:

(1) 大産油国(イランとサウジアラビア)を順番に攻撃し、ユーロ建決済を完全にやめさせる。次の攻撃対象はサウジアラビアだとmattは考える。(ただし、イランが次になる可能性は残っていると思う)
(2) イラン、サウジアラビア、イラクを占領すれば、中東はそれでもうよい。(他の産油国は弱小国ばかりだ)
(3) 中東の次はロシア。ロシア産石油の輸出をユーロ建で行おうという動きがロシアにあるが、これをやめさせる。(どういう手段でやめさせるかまだmattにも"名案"はないが、例えばウクライナを通るパイプライン絡みで何らか工作する、という手が考えられる。ウクライナ大統領選で Yushchenko を勝たせたのは、その工作の第一歩と見ている。Yushchenko の妻はウクライナ系アメリカ人だが、これが何を意味するか言うまでもない)
(4) Condoleezza Rice がベラルーシを独裁政権の一例として挙げたが、これも将来ロシアへ圧力をかける伏線と見る。ウクライナと同じように親米政権を樹立できれば、ロシアの脇腹に剣を突き立てることができる。(ベラルーシはモスクワから近い)

補論:

(A) イランよりサウジアラビアを制圧するのが先と考える根拠は以下の通り。

 - サウジアラビアの方が石油の埋蔵量が多いので、制圧できた場合に得られる経済的利益がより大きい
- イランは山岳地帯で人口1億近い。サウジアラビアは西部を除き平坦で、人口は2500万程度。サウジアラビアの方が機械化部隊にとっては占領しやすい。
 - サウジアラビアの軍隊はもともとからアメリカ(の民間企業)に依存している。従い、サウジアラビア軍を無力化する方がイラン軍を無力化するよりアメリカにとってはおそらく簡単である。

一方、

(B) サウジアラビアよりイランを優先して攻撃するはずと考えられる理由も、以下のように存在する。

 - サウジアラビアは、イスラム2大聖地を有している国。ここを異教徒が占領すると大問題になってしまう。
 - 核開発をしているのはイラン。攻撃する口実をイランはすでに与えてくれている。
 - 自発的に率先してユーロ建で石油輸出しようとしたのはイラン。ドル基軸通貨体制にとってはイランの方がより深刻な脅威である。
 - イランはシーア派の国。隣国イラクの議会過半数を確保したシーア派への浸透工作は当然行うはず。核開発問題と併せて、イランを槍玉に挙げる口実が一つ増えつつある。

というわけで、次にイランを攻める可能性を否定できない。

--------------------

ざっと以上のようなものだ。mattが中東情勢をしばしばblogで取り上げるのは、こういう仮説を立てているからである。

もっとも、この仮説にはまだ弱点がある。

弱点(1):イランが石油をユーロ建で輸出しようとしたということを述べている人物を一人しかmattは知らない。(増田俊男という投資顧問/投資家で、中東や石油の専門家ではない。今のところ、この仮説は増田の発言を証拠として採用している)
弱点(2):そんなにユーロが脅威なら、ヨーロッパ諸国が通貨統合に走るのをなぜ阻止しなかったのか、という疑問が残る。