僕の母親は小学校の先生なのだが、基本的には数年に一度異動があって勤務する学校が変わる。たまたま僕が小学校に通い始める年に同じ学校に赴任することになった。
学校は家から徒歩で5分程の場所にあり毎朝歩いて通学していたのだけれど母親は車で通勤していた。
ある雨の日の朝、僕はいつも通り学校へ向かっていた。母親は僕が出るときにはまだ家にいた。
傘をさして見慣れた道を歩いているとその道の真ん中あたりにとてつもない大きなカエルが鎮座していた。正確には分からないけれど当時の感覚ではちょっとした置き物くらいはあったのではなかろうか。
ちょうどそのカエルを通り過ぎようとしたとき後ろの方からザーッと音がして、見ると母親の車が走ってきていた。僕が家を出てすぐ後に出たらしい。
僕は再びカエルに視線を戻してさらに車と交互に見た。車が近づくにつれて雨をまとったタイヤが出すザーッという音が大きくなっていよいよ僕を追い越そうとしていた。
ザーーーーーーーーーパァンッ!!!
突然そんな爽快な音が響いた。車はその後も何事もなかったように僕を追い越して学校の方へ消えて行った。だからタイヤがパンクしたのではない。
車が通り過ぎた後の道にはもうカエルの姿は無かった。
強烈な音と映像が今でも目に焼き付いている。トラウマとかじゃなくて何というか、少なくともカエルが潰れる音はグチャッだと思っていたし動物の危機感知能力は優れていると思っていたから、一台の車と一匹のカエルが織りなした余りにシュールな光景はあらゆる意味で予想を裏切られたからここまで印象に残っているんだと思う。 その光景を無心で凝視する当時の僕の姿も含めてシュールすぎる。
一瞬で平になったカエルだったモノを横目に命とは儚くも美しいと子供ながらに思ったような気がした、そんな朝でした。