旧優生保護法を巡っては、これまで2度に渡り本ブログでコメントさせて頂いています。強制不妊に対する国への賠償命令が相次ぐ中、私は一貫してメディアと有識者の責任について訴えてまいりましたが、今回は3度目の投稿になります。

 

 

 

画期的な動き!

 令和5年1月24日付け神奈川新聞は、地裁では初となる、旧優生保護法下での強制不妊に対し、国に賠償を命じる判決を下したことを報じています。旧優生保護法下で不妊手術を強いられたとして、熊本県の二人が国に損害倍書を求めた訴訟の判決で、熊本地裁は1月23日、旧法は差別的な思想に基づき憲法違反だと判断し国に計2200万円の支払いを命じています。一連の訴訟で、昨年の大阪、東京両高裁に続く賠償命令となり、地裁としては初めてで、被害救済の議論が加速しそうだ、としています。

 そうした中で、私が常々訴えてまいりました「メディアと有識者の責任」を巡り、新たな画期的とも言える動きがありました。2月6日付の神奈川新聞は日本産科婦人科学会(日産婦)が実施した学会員へのアンケート結果について報じています。

 

強制不妊で日産婦報告書

旧法の問題 議論し継承

 日本産婦人科学会(日産婦)はこのほど、旧優生保護法(1948~96年)下で障害者らが不妊手術を強いられた問題に関する学会員へのアンケート結果を報告書にまとめ、公表した。報告書は専門家らが旧法の問題を議論することが欠如していたと指摘し、再発防止へ「歴史から学ぶ」と表明した。

 

メディアと有識者の責任」ですが、日本産科婦人科学会は『有識者』該当すると考えます。現時点で報告書そのものを確認していませんが、新聞の記載によると、日産婦がまとめた報告書のなかで、自らの『責任』に関する言及と言える記載は以下の通りです。

 

○ 96年に障害者差別にあたる一連の規定が削除され、母体保護法に改正されたことについては、48.3%が「もっと早く改正すべきだった」と答えた。

○ 旧法問題の検討委員会委員長を務める加藤聖子九州大教授は「旧法の問題点がきちんと継承されるよう会員や医学生への教育などの仕組みを検討したい」と話している。

 

ん・・・!

 「画期的な動き!」として、日産婦の報告書を評価したいところではありますが、気になる点もあります。前述のアンダーラインです。

○ 96年に障害者差別にあたる一連の規定が削除され、母体保護法に改正されたことについては、48.3%が「もっと早く改正すべきだった」と答えた。

黄色マーカーで示した「48.3%」という数値をどう評価すればよいでしょうか? 是非、報告書そのものの記載を確認したいのですが、単純に考えると日産婦会員の約半数しか旧優生保護法の障がい者差別にあたる一連の記載を問題視していないとすると、この報告書を評価していいものか考えてしまいます。

 また、新聞報道によると、旧法の強制不妊の手術の規定については、全体の67.5%が「詳しくは知らない」を選択した旨が報じられています。『詳しくは』の有無で結果は大きく変わってきそうですが、私でも知っていた事実を学会員の3人に2人が知らないとする、これは驚きです。

 

それでも画期的な動き

 それでも私は、この報告書を有識者が責任に向き合った第一歩として、画期的な動きと評価したいとおもいます。

 そうした中で、問題はメディアです。メディアは相変わらず自らの責任に向き合うことなく、国を悪者にすることに終始ているように見えます。各メディアによって、そのトーンも異なりますが、国の責任を大声で叫んでいる某メディアこそ、一刻も早く自らの不作為に向き合って頂きたいと思います。メディアの皆さんには勇気をもって、謝罪の弁を自らの紙面に表すべきではないでしょうか。