去る5月17日(金)、保護司の定例研修会に出席しました。

 

以前もお伝えしましたが、保護司には研修への出席が課されています。毎年4回の研修が予定され、今回は今年度最初の研修です。私たち大磯保護司会を管轄する横浜保護観察所から保護観察官が講師として派遣されました。

今回の研修テーマは『面接の進め方』です。

 

言うまでもありませんが、保護司にとって保護観察対象者との面接は極めて重要な仕事です。その面接の手法について保護観察官からの講義を受けたのですが、その中で、是非このブログの読者の皆さんとシェアしたい話があったので、触れたいと思います。

 

研修は『面接の進め方について』と題するテキストに従って進められました。保護観察対象者と保護司とのやり取りの中で、保護観察対象者が上司や親に対する不平を言う場面が想定されていますが、保護司はどのように受け答えるべきか?例文として以下のやり取りが記載されていました。

 

(例1)

【対象者】「親方は口うるさくて、すぐ手が出るので、安心して働いていられないですよ。」

【保護司】「親方さんは口うるさくて、すぐ手が出るので、君としては安心して働ていられないのだね。」

 

(例2)

【対象者】「は、今日こうしろと言ったかと思うと、明日は別のことを言います。

【保護司】「あなたとしては、お父さんの言うことを聞こうとすると、混乱してしまうのですね。」

 

対象者の「親方」に対して保護司は「親方さん」、「父」に対しては「お父さん」といった具合のごく普通のやり取りですが、現実には対象者の名には母親に対しては「ババア」といった具合に乱暴な言い方をする対象者もいるわけで、そのような場合、保護司は敢えてその表現に付き合うことで、距離感を縮める効果があるという説明がありました。

例えばこんな感じでしょうか。

 

(例3)

【対象者】「最近ババアには連絡していないから、都合はわからない。」

【保護司】「でも君はまだ未成年だから、3社面接が必要だ。面倒かもしれないがババアに連絡して日程を調整してくれないか?」

 

このような文書は研修用のテキストに掲載できませんが(笑)、対象者との距離を縮める効果があるということです。

わかるような気がします。

この話を聞いて私は中学時代のことを思い出しました。

当時、私の担任の女性教諭〇〇先生は、「〇〇おばん」とあだ名されていました。どのような場面かはっきり覚えてはいないのですが、数学の男性教諭が教室で私たちに向かって、「おまえら、そんなこと言ってると『〇〇おばん』が怒るぞ。」との言葉に、生徒たちは一斉に驚き、「わり~よ。言ってやろ・・。」なとという言葉を男性経論に投げかける者もいましたが、その場で両者の距離感が急に縮まったのを感じました。

 

保護司の委嘱を受けて5年目になります。

これまでに多くの保護観察対象者を受け持ちましたが、一人一人異なる個性の持ち主です。月に2回の面接が保護観察対象者と相対する機会ですが、中には話し好きで一方的に話し続け、私との面接が楽しくて仕方ない様子の対象者もいます。私も時間が許せば2時間以上付き合うこともありました。一方で、頑ななまでに心を閉ざし、雑談で話題を振っても必要最低限の返事しかしてくれない対象者もいます。むしろこのタイプのほうが多いのです。このような対象者の本音を引き出すのも保護司の仕事だと思いますが、そう簡単なことではないし、そもそもこちらが「閉ざされた心をこじ開けよう」などと考えて接すると、こちらの意図が相手に伝わり、ますます頑なになってしまうだけなのです。

 

かつて自分の父親に悪い感情を抱いていた保護観察対象者を受け持ったことがありました。ハッキリ覚えていないのですが、対象者が父親のことを「くそオヤジ」呼ばわりしたことがありました。このような時はきっと今回ご紹介した手法が有効だっただろうと思いました。

 

もし今後、このくだけた呼び方をする手法を使う機会があれば、守秘義務に触れない範囲でご紹介したいと思います。

また、この手法は前述の私の中学時代の思い出のように、保護観察対象者に限らず、日常においても有効なのではないでしょうか?

読者の皆さんも試して効果的な結果を生み出せた場合は、ご報告いただけると嬉しいです。