今定例会の「台風の目」となる可能性について前回ブログで紹介させて頂きました以下の2つの陳情ですが、6月5日、9:30~総務建設経済常任委員会におきまして付託案件審査が行われました。

 

陳情第2号:携帯基地局からの電磁波の強さについて見直しを求める陳情

陳情第3号:携帯基地局設置について設置・変更手続き条例の制定を求める陳情

 

 

 

傍聴者が見守る中で審査開始

 審査開始に先立ち、既に第一委員会室には傍聴者4名(1名は子連れ)が着席、関心の高さを示していました。しかし、本陳情は村上梅司氏以下18名の連名で行われていることを考えると傍聴者4名は少ないのでは? と思いましたが、平日のこの時間なので恐らく皆さんお仕事なのでしょう。執行者側出席者の都市部長、都市整備課長、計画指導班長、政策部長、地域政策課長、地域支援班長同席のもと、陳情者代表の村上氏からの簡単な説明に続いて質疑に入りました。質疑終了後の採決では陳情第2号は賛成少数の不採択、陳情第3号は賛成多数の採択となりました。両陳情の最終的な採否は6月13日の本会議で決まるので、ここでは質疑を通して見えてきたことを皆さんにお伝えしたいと思います。

 なお、現時点で反訳は入手できていません。私の拙いメモによる記事なので、正確さに欠く場合はご容赦ください。

 

健康被害の痛切な訴え

 電波障害に関する町内の発生事例に関する質問に対し、陳情者は「主訴は不定愁訴」としたうえで、二宮からは訴えはないとしました。その背景には、仮に電波障害を受けていても、電波障害に関する知識がないため、健康被害を受けたとして声を上げるに至らない現状があるとしました。村上氏は原田地区の中継基地を巡る問題で近隣住民114軒に聞き取りを行った際に、住民の電波障害による健康被害に関する知識はゼロであった、としています。

 一方、実際に国内でも健康被害は出ていて基地局を撤去した例もあるとしています。ここで重要なのは日本人はほとんどが知らないという事。欧州での意識調査では70%以上の人が電磁波による健康被害の可能性を認識している一方で日本は統計的には0%。このような背景のもと、基地局の影響で健康被害が発生してもそれが何のせいか判らない状況があります。

 そうした中で、陳情者のひとりであり村上氏とともに趣旨説明を行った平塚市在住の村越史子氏から健康被害に関する痛切な訴えがありました。村越氏は2年前に西小磯に在住していましたが隣接地に携帯基地局(4G)が設置されました。当時同氏の娘はテレワークにより在宅勤務をしていましが、耳の不調を訴えるようになります。平塚の耳鼻科の診察を受けるも症状は治まらず、加えてめまい・吐き気を訴えるようになります。窮状を知った向いの方から電磁波による障害を指摘され一冊の本を紹介されましたが、そこに示されていた電磁波障害の症状は娘のものと酷似していました。娘の症状は「スイカ割りの眩暈」に例えられるとして、週に2,3日は寝たきりになりトイレにも行けない状態となります。電磁波障害の可能性を考慮して薬の投与は止め、町に相談するも電磁波測定器は無いといとの回答です。楽天モバイルに電磁波計測を依頼したところ家の中でも電磁波は測定されました。2か月後に診察を受けた際には、日本では「電磁波過敏症」は認知されていないためその診断は下されなかったのですが以下の診断が下されました。

 

自律神経失調、平衡機能障害、眼球追従運動障害

「微量な電磁波や音などの物理的ストレッサー、化学物質によるストレッサー、精神的なストレッサーによってもストレスを生じ、症状を悪化しやすい。関係者のご理解とご配慮が望まれる」

 

 結局、この家に住み続けることは出来ず、ウイークリーマンションを借りそこで寝起きすると吐き気は止まりました。しかし家に戻ると再び症状が出る状態を繰り返しました。その後、国府に家を借りたのですが、その家はカビがひどく風呂には入れなかったため、自宅に戻って入浴を済ませていたのですが、そのたびに症状が出るといった状態が4か月ほど続きました。その結果、やせ細り、もはやこの家に入ることは出来ない、このまま死ぬのではないかと思い、ローンの支払いが間もなく終わるところでありましたが、自宅を手放しました。実に理不尽な話であり、家の前を通ると涙が出る。娘だけでなく、自身も頭がボートしたり、記憶が飛んだりといった症状がある。現在、平塚に転居したが家の中の電磁波は低く、吐き気、耳鳴りは止み、眠れるようになりました。なお、前述の向かいの方は健康被害を訴えています。

 

事前説明に関する条例

 村上氏によると、鎌倉市は携帯電話会社が新たに基地局を建てる、或は基地局を改造する場合、携帯電話会社に事前の報告を義務付ける条例を制定しました。さらに条例により「自治会代表」の要望があった場合、住民説明会の開催が義務付けられています。これは全国初であり2010年に施行されています。これに続いて宮崎県小林市では、自治会代表の要望を前提とせずに、住民の要望により住民説明会の開催が義務付けられている点で一歩前進していると言えます。このように条例が制定された自治体は全国で10前後と思われるとのこと。

 

電磁波による発がんの可能性を巡る攻防

 WHOの諮問機関IARCは基地局からの電磁波はがんを起こす可能性があると結論付けています。この報告が経済界に与える影響は大きく、携帯電話会社にとっては死活問題ということもあり、キャンペーンを始めたとしている。ただ、発がん性の問題を巡ってはWHOが出したファクトシートを巡り、否定的な見解もあるとする意見が議員より示されました。これに対する村上氏の見解は、WHOはその影響力に鑑み、発言は常に抑制的であるとしています。言葉も常にマイルドな表現を選び一般人が見ても大したことない受け取るとしています。しかしながら実際のデータは科学的には健康被害があることに変わりない。日本ではその情報は一般人には伝わらないとしています。

 IARCの主張する「発がんの可能性」の根拠は「科学的疫学調査」の結果であり、ランクは2B。AになるかBになるかCになるか? これにより大きな金が動く。死活問題であるからIARCに結果を固唾をのんで見守っていた。「発がん性あり」の結果はセンセーションを起こした。だからこそ携帯会社は膨大なお金を出して反対キャンペーンを展開して現在に至っている。

 

私は13日の本会議で両陳情とも「採択」とします。

 両陳情に関し、私は「採択」が妥当と判断しています。討論は以下の様なものになるでしょう。

 

陳情第2号、陳情第3号、いずれも採択の立場で討論させて頂きます。

 

そもそも政治というものは常に弱者の立場に立って判断していかなければならないと考えます。陳情審査に当たってはその多くが町民の切実なる訴えではなく、特定の政党のプロパガンダ色の強いものが多いというのが私の印象ですが、両陳情は町民の切実なる訴えであり、しかも現時点では少数派であり常に自分たちは黙殺されてしまうのではないかと不安を抱えつつの訴えと判断し、私は委員会審査を傍聴させて頂きその訴えを直に耳にしました。

 

この問題の背景には国を挙げてのデジタルトランスフォーメーション推進が無関係ではありません。これにより多くの国民が、利便性を享受することになり、社会的弱者もこの恩恵に預かれることは間違えないでしょう。しかしながらこの大きな歯車を動かす過程で一部の弱者が黙殺されることは絶対にあってはならないことです。本末転倒ではないでしょうか。

 

一見遠回りと思えても、少数派の訴えを黙殺することなく、向き合い、課題・問題を解決しつつ、情報化社会を構築していくことが、結果的には国益につながるものと判断しますが、その大前提は、電磁波による健康被害の訴えに科学的合理性があるか、ということです。過去を振り返ると、高度成長期の公害問題、シックハウス症候群、何れも最初は少数派であっても訴えに合理性はありました。そして課題・問題に向き合い解決していくことが、一見経済的に非合理的と思えても結果的には経済を利して国益につながりました。

 

陳情審査に際して訴えは電磁波による健康被害は「気のせい」では済まされない状況と言えます。実は6月5日の委員会審査の後に、同じく電磁波による健康被害を訴える町民の方、この方は化学物質過敏症にも苦しんでいるのですが、直接お話を聞く機会があり、同様に「気のせい」では済まされない窮状を目の当たりにしました。問題の性格上、人体実験による客観的なデータの収集は倫理上問題があり、疫学的調査を有効に活用することが有効な手法と思えますが、重要なことは現時点で、この狭い地域の中でこれだけの訴えがあることではないでしょうか。

 

改めて陳情項目を見てみたいと思います。陳情第2号では「基準値の見直し」、陳情第3号では「説明会開催義務化」です。まったくもって妥当な訴えと考え、採択とします。