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拝啓四十の君へ

3歳男児の親としても、フリーアナウンサーとしても「こんなん聞いてないし!」と、絶望しては望みを繋ぐ日々です。それでも40歳くらいには戦闘記として懐かしめたら!
子育ては十人十色すぎるので、どこかでどなたかに届く事があればとても嬉しいです。

 いとまきまきいとまきまきひいてひいてトントントン。私の記憶は、いつもここで途切れていた。しかし、糸を巻くには理由があるはずで、暇だから引いているはずはないのだ。子どもと過ごすようになってから、気づかされることが多い。「いとまきのうた」で作っているのは「こびとさんのお靴」。そうだったのか!と驚いたのは序の口で、糸に続いては種をまき、麦畑やスープまで作っているのだから、その業務量の多さに卒倒しそうになった。

 嫌いだった歌の印象も変わった。「どんぐりころころ」だ。お池にはまって、ドジョウと出会えたのは良かったもののお山が恋しいと泣いて終わるあの歌。こどもの頃から、池に落ちた「どんぐりのぼっちゃん」が不憫で、泣いても泣いてもどうしようもない現実をつきつけられているようで、愉快に歌う気にはなれなかった。

 そんな「どんぐりころころ」を、息子が好きなキャラクターが歌う動画がある。歌の内容がアニメーションになっていてぼっちゃんもドジョウも登場するものだ。一緒に見ていて、目から鱗が落ちた。どんぐりころころは、1番も2番も同じ歌詞なのをご存知だろうか。映像を頭に浮かべてほしい。1番が終わり、2番が始まると、どんぐりが池に転落するという悲劇が繰り返される。しかし、徹底的な違いは、1番で先に落ちたぼっちゃんがまだ池の中に居るということだ。そう、これでどんぐりは「二人」になるのである!動画では、2番でドジョウが登場する時、その背中には先に落ちたぼっちゃんがしっかりと乗っているのだ!仲間が来た。そして、それは日が経つにつれて増えていくことまでも想像できてしまう。「ぼっちゃんは孤独じゃなかったんだ」と、胸のつっかえが取れるまでに30年以上かかってしまった。

 こどもの世界は優しさと発見の巣窟だ。息子はいつも、私をそこへ誘ってくれる。一方、仲間が増えても、というより増えれば増えるほど次々に泣いて困らせられるので、「ぼっちゃんのお相手は大変だよね」といたくドジョウに共感してしまった。悲しいかな、やはり私は現実を生きる大人なのである。