その21
比島戦[8]
不本意な最後
その日が明け2人で、バギオ東北方、高原舗装づたいに本隊を追った。案外涼しく、米機の飛来もなく、久しぶりに悠々の行軍だった。
それから間もなく本隊に追いつき、山中入り口の破壊された小会社に到着した。アルコール品の何か製造工場だったようで、まだアルコールが残っていたのだろう。好きな戦友は、久しぶりにアルコールを口にし、ついつい深飲みになり、狂い死にしてしまった。口から泡を出し、もだえ死にしたが、ほんとうに悲惨な思いだった。
米良さんに会う
バギオが米軍占領となり、私達はバギオ東北方、山あいの守備に就いた。その日も、もう夕暮れ近く、私は2人、山中山あいの国道を移動中、道上の民家に偶然立ち寄った。中をのぞくとだれか寝ているので、どきっとしながら近づくと、米良さんだった。
びっくりして
「米良曹長、米良曹長」と肩に手を当て呼び続けたが返事はなく、もう目もうつろで、息も絶え絶えだった。大丈夫かなあ、と案じながらどうすることもできず別れた。
続く