「前の会社を辞めた理由は何ですか?」


そう聞かれたら、私は以前こう答えていました。


「人間関係です」


もちろん、それは間違いではありません。


最後の上司との関係は、私にとって大きな出来事でした。


その上司は、営業のいろはを私に叩き込もうとしました。


それは、それは厳しい指導でした。


時には、暴言とも取れるような言葉を投げられることもありました。


私は、その上司が怖かった。


辞めて10年以上経った今でも、時々夢に見るくらいです。


だから当時の私は、

「この人がいたから会社を辞めた」

そう思っていました。


でも、今振り返ると少し違う見方もできるようになりました。


なぜなら、その上司は指導を始める前に、私に選択肢を渡していたからです。


「俺の指導を受けたいか?」

「お前が望むなら、今のまま働き続けることもできる」


そう言われました。


今のままというのは、契約が取れない実力のままということ。


その上司は分かっていたのだと思います。


本人が変わりたいと思わなければ、どれだけ正しい指導をしても意味がないことを。


私は、その指導を受けることを選びました。


その頃の私は、もう長い間伸び悩んでいました。


「この人の指導でダメなら、もう辞めよう」

そんな覚悟もありました。


もちろん、今でも思います。

私にスパルタ式の指導は合わなかった。


でも、その上司が私の成長を全く考えていなかったとは思いません。


自分の仕事だけに集中することもできたはずです。


それでも、私に向き合ってくれました。


だから私は、その経験を単純に「パワハラだった」と片付けることはできません。


では、ここで一つ考えたいことがあります。


「合わない」ということは、すべて人間関係の問題なのでしょうか。


私は、キャリアコンサルタントの視点を学んでから、この問いを考えるようになりました。


「人間関係がつらい」

相談者からそう聞いた時、そこにはいろいろな意味が隠れています。


・本当に相手との関係性に悩んでいるのか

・価値観が合わないのか

・コミュニケーションの取り方が合わないのか


それとも、仕事内容や働き方そのものが自分に合っていないのか。


「人間関係」という言葉だけでは、本当の悩みは見えてきません。


私自身も、当時は「上司との人間関係」が原因だと思っていました。


でも今振り返ると、


・営業という仕事との相性

自分に合わない成長のさせられ方

自分が本当に大切にしたい働き方


いろいろなものが重なっていたのだと思います。


人は、目の前の出来事だけで悩んでいるとは限りません。


その出来事を、自分の中でどう意味づけているか。


そこに本当の悩みの根っこが隠れていることがあります。


だからキャリア相談では、

「人間関係で悩んでいるんですね」

で終わらせない。


その言葉の奥にある、その人自身の物語を見る。


それが、人を理解するということなのかもしれません。


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