アイドルの話を受けて2週間後のこと。

机を挟んだ向かい側、つまり僕の目の前には
メンズアイドル「花と風」の所属会社役員が並んでいた。

「どうもどうも!いやぁよろしくね」

そんなにぎやかな一言からはじまった面接だった。

冬のせいだろうか、どこかひんやりした空気に包まれながら、あぁこれは緊張か、とふいに自分の背筋を伸ばす。

僕の長所はなんだったか、そんなことを頭の中で反芻しながら先方の話を聞いていた。

「うちのグループにはね、うんちがいるんだ」

はち切れんばかりの緊張の弦が
この言葉でゆるみ切ってしまったのを今でも覚えている。

「う、うんち…ですか?」

心の底からの「うんちですか?」だった。
平静を装って真剣な顔で返したつもりだったが、

「いやぁ、驚いちゃったでしょ?」

そう言い当てられて
うんちだもの、それはそうだ、と
自然と笑みがこぼれた。


曰く、
「お花畑のような美しい風景の中に一つ違和感がある。それがうんちだ。そんなアイドルグループをプロデュースしている。」

だった。


うん、よくわからない。
逆立ちしてもわからない。
僕の脳内が混乱している。

そんな中でも、先方は矢継ぎ早に続ける。

「どうだい?うちのグループはいりたいかい?」

たぶん光よりもニュートリノよりも速いスピードで飛んできたその誘いの言葉への僕の返答は

「すみません、うんち見てもいいですか」

だった。

言った瞬間に、それは亀よりもミジンコよりも遅く、クラゲのようにフワフワした空気を作り出した。

「そうだね、見に行こう、うんち」

アイドルに似つかわしくない言葉が闊歩する議場に一抹の不安を覚えつつ、次の週にダンスレッスンを見学させてもらえることになった。


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♢松浦尚久 花と風 まつぴ(白色担当)
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