そう言われる度に「この人は、全てを賭けて闘った経験がないんだな」と、子供ながらに思っていた。
43歳になった今でも、同じようなことを言われる。
「そんなに熱中できることがあって羨ましい」と。もう反発する気もない。
嬉しそうに 「そうですね」と応えている。
我が子に好きな事が見つからず、焦る親御さんも少なくない。
けれども、自身の若かりし頃を顧みれば、好きな事などあっただろうか。
そもそも熱中できることなど、その辺に転がっているものではない。
ましてや、それを継続するのは半端なことではない。
どんなに好きなことであっても、それを生業にした瞬間から、気持ちは変質していく。
それ自体が重荷となり、逃げ出したくなるときが、一度や二度はやってくる。
求道者は、誰もが経験すること。
それを乗り越えた者しか生き残っていないし、その先の景色を見ることはない。
自分の仕事に熱中し続けるには、何歳になっても、毎日仕込み(勉強や研究)すること。
それが、一生好きでい続けるための秘訣。
今夜も湯船に浸かり、ウトウトと居眠りしながら、大好きな医学書にかじり付いている。
これは努力ではなく、中毒にちかい。