キャプテン翼の若林源三に憧れ、7歳でサッカーを始めて、12歳のときに全国制覇した。
プロになるまで毎週、全国各地を遠征してきたのだが、いつもハーフタイムや試合後に目にするのは、監督やコーチが子どもたちを怒鳴り散らし、殴っている光景だった。
「てめぇ、気合いが入ってねぇから、あんなミスするんだろ!馬鹿野郎!」
「お前みたいな奴はやめちまえ!」
我が子が殴られている姿を見ていられずに、思わず背を向けたり、その場を離れる親子さんもいた。
休息するはずのハーフタイムに、罰でグランドを走らせる監督もいた。当然、後半戦はへろへろになって出てきた。
殴られた子どもは目を真っ赤にして、猛牛のごとく突っ込んでくる。自分たちには、必死に追いかけてくる相手を軽くあしらうテクニックがあったが、内心気の毒だった。負けたら、またこいつらしばかれるのだろうと。
自由奔放なクラブチームで育った身としては、スパルタチームに所属しなくて、ほんとに良かったと思う。
彼らは誰のために、何の為に死にものぐるいで頑張っていたのか。
勝負に拘る気持ちもあるが、指導者に怒られるのが嫌だったのだろう。
そもそも、なぜ監督が偉そうにするのか、さっぱり分からなかった。
10代の頃に理不尽と不条理を経験することは大切だが、それも程度の問題であり、度を越すと人格形成に悪影響を及ぼしかねない。
本来、スポーツは楽しむものであり、指導者のエゴを子どもたちで満たすものではないはず。
「なんでシュートを外すんだよ!!」
好んでシュートを外すバカはいないだろ。
「怒鳴る代わりに、あんたが手本を見せるかコツを教えてやれよ」他人事ながら、そう思っていた。
試合中に怒鳴っている監督やコーチは、日頃の指導不足を大声で発表しているようなもの。見っともない。
怒鳴った内容をメモって、明日からの練習メニューに落とし込めばいいのに。
当時に比べたら、指導環境は相対的に改善されたであろうし、そうであることを願う。
以下は、昨年日本代表を破ったデンマーク・サッカー協会の少年指導10ヶ条。
理想郷ではあるが、子どもたちを指導している関係各位には、是非一読して頂きたい。
1.子どもは、あなたのものではない。
2.子どもサッカーに夢中だ。
3.子どもあなたと共にサッカー人生を歩んでいる。
4.子どもたちから求められることはあっても、あなたから求めてはいけない。
5.あなたの欲望を子どもを介して満たしてはいけない。
6.アドバイスはしても、あなたの考えを押し付けてはいけない。
7.子どもたちの体を守ること。しかし、子どもたちの魂まで踏み込んではいけない。
8.子どもたちに大人のサッカーをさせてはいけない。
9.コーチが子どもたちの人生をサポートすることは大切だ。しかし、自分で考えさせることが必要だ。
10.コーチは子どもたちを教え導くことはできる。しかし、勝つことが大切か否かを決めるのは、子どもたち自身だ。