切るか切らぬか | 伊藤和磨オフィシャルブログ Powered by Ameba

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 椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症と診断され、手術の日程が決定している方や術後に症状が再発してしまった方が、全国各地からやってくる。


 MRI検査後に、飛び出た椎間板や変形した骨が神経を圧迫している画像を見せられると、「あぁ、神経に触れているから痛いんだ」なんて具合に、主訴と結びつけて捉えてしまう。

 MRIを設置した病院は、手術を受ける患者の数が著しく増える。あれを見ながら手術を勧められたら、仕方がないと思って首を縦に振ってしまうだろう。


 ほんとうの腰痛は、腰が痛むのではなく、脛から足首が激しく痛む。

 激痛で50mも歩けなくなると、1分でも早く手術して楽にしてくれと懇願したくなる。

 

 私も2年前の坐骨神経痛で立てなくなったとき、病院でMRIの画像を見せられて「2度とバーベルを担いだり、持ち上げたりしない」と思ったし、「ヘルニアを切除すれば...この苦痛から解放されるんだ」とも考えた。だが結局、切らずになんとか暮らせている。

 

 でも、昔の腰の状態とは同じではない。

ときどき、歩いていると左足全体が痺れてしまうこともある。腰が悪いという事実を受け入れて、共存していく覚悟をきめた。


 セルフケアをしていれば、ランニングしたり泳いだりもできるが、腰に負担をかけるようなレベルの運動はしなくなった。

 

  

  正常な腰椎と椎間板 

   自分の腰椎と椎間板

 

 どんなに辛くても、それが何年も変わらずに継続するケースは極めて稀だと言える。

 大抵は、2ヶ月経過すると、神経の炎症と腫脹が自然と治り、症状が緩和して腰のことを考えずに暮らせるようになっていくもの。

 引火して爆発した花火のように、火薬がなくなるまで痛みは続くが、やがて消えていく。


 激痛で思考力が削られると、手術でなんとかしてもらいたいと考えてしまうものだが、術後のコンディションは想像しているほど快適なものではない。

 特に腰痛症は、病巣が軟部組織にある場合が多く、画像所見だけで手術に踏み切った場合、望んだ結果にならない確率が高い。

 それは、19年間腰痛患者を診続けてきて痛切に思うこと。


 病院側としては、手術した方が儲かるから手術を勧めてくるわけだが、患者の腰痛ライフをろくに調べることなく、機能テストも実施しないまま、よくぞ人様の体を切れるものだと感心する。

 人の痛みなら100年でも耐えられるからな。

 

1ヶ月後         初診

 

 上の画像は、椎間板ヘルニアによる坐骨神経痛で来院されたときのもの。

 初診のときは激痛で立っていられなかったが、1ヶ月後(2度の施術)には通常の生活を送っている。

 本人も痛みは、1〜2割程度と言っているが、痛みがないからと言って、腰の構造が元に戻ったわけではない。

 下記の画像を見ただけでも、左の大臀筋と右の腰部の筋肉が萎縮しているのが一目瞭然。



  なにもしなければ、いずれ再発する可能性は高い。

 痛みがなくなったから、それで「はい、終わり」ではない。そこから、次のフェーズ(運動学習+認知行動療法)が始まるのだ。


 このようにアンバランスな状態から、バランスされた状態へと回復させることも、私の仕事の一つ。

 最終的には、本人がやりたい事を遂行できるところまで引き上げていく。


 切るべきか切らぬべきか。

個人的にはできるだけ切らずに、工夫しながら共生していくことをお勧めする。