成し遂げる人の志勢力 | 伊藤和磨オフィシャルブログ Powered by Ameba

伊藤和磨オフィシャルブログ Powered by Ameba

伊藤和磨オフィシャルブログ Powered by Ameba

 

「成し遂げる人の姿勢力」というビジネス本を角川から刊行する予定だったが、現在お蔵入りしている。3年近くかけて書いたが、こんなこともある。
5人のツワモノとの対談が収録されている。このまま寝かして置くのは寂しいので、各対談の一片だけ、ここに記しておきたい。


対談〜高山善廣選手【帝王学】

 

 帝王と呼ばれるプロレスラー高山善廣選手との対談。
高山選手は、高田延彦さんから14年前に紹介してもらった、誰よりも「ヒール」が似合う男。PRIDEで藤田戦を間近で観戦したときは、心底痺れた。

伊藤 昭和の熱かった時代と平成の狭間にいて、両方と肌を合わせる機会があった高山さんは、少し寂しいなとか、そんなことを感じることはありますか?

高山 今の世の中は整備されすぎているんです。「尖ったものは、危ないから丸くしましょう」という世の中だから、ゴツゴツした男なんか出てくるわけがない。

 

伊藤「この瞬間のためにプロレスをやってるんだよ」とか「気持ちいいな」と思うのは、どういうときですか?

 

高山 それは、勝っても負けても、自分の試合が終わった後でお客さんがすごく騒いで喜んだときかな。

 

伊藤 今のレスラーと当時のレスラーでは、変わってきたところはいろいろあると思うのですけど、技術うんぬんを超えたところにある魅力の面では、どんな違いがありますか? 

 

高山 よく猪木さんが言うけど、プロレスって、相手と戦うと同時に、観客とも戦わなきゃいけない。PRIDEというリングは、まさに、相手とも本当に戦わなきゃいけなかったし、同時に観客ともちゃんと戦っていたっていう、すべてを戦いのシーンに結びつけていたリングだったんだよね。
 負けても、その選手に魅力があればまた呼ばれるし、逆に、勝ってもつまんなかったらいらないよ、ってなっちゃう。それはもう、プロレスでもPRIDEでも一緒だったわけです。

 

伊藤 顔面がボコボコになったことが何度もありましたが、試合中に意識はあるものですか?

 

高山 シュルト戦で失神したときだけ。フライ戦も、「頭をつかんで殴り合ったほうがいいだろうな」と思ってやってたの。あれはプッツン切れてめちゃくちゃやったんじゃなくて、このままのほうがつかまえていられるし、パンチも当たるし、そのうち向こうがダメージを負ってきて違う方向に行けたらいいな、と思いながらやってた。
 ボコボコに殴りながら、ロープ際でスープレックス(投げ技)をするシーンがあってね。あれはとっさに出たんだけど、そのときぐらいから「高山コール」が起こっちゃって、いい気になっちゃったの。「もう1回投げてやろう」とか思って、それで失敗して負けたんだけど。だから、お客さんの反応も頭に入っていたんだよね。

 

伊藤 その魂は、完全にプロレスラーですよね。プロレスーとアスリートは求められているものが違います。あの試合のあのシーンって、まさにプロレスラーだったんですよね。

 

高山 他の人のことは分かんないから自分だけの考えだけど、確実にプロレスのタイトルマッチのほうが消耗する。相手が強い人だったらとくに。PRIDEとか「猪木ボンバイエ」のあとは、俺は普通に飯食いに行っているから。
 プロレスのタイトルマッチは、試合後歩けなくなるときもあるし、翌日に熱が出たこともある。

 

伊藤 大げさに語る気はないんですけど、高山選手にとって「美学」とか「哲学」はありますか。あるいは、レスラーとして「この1戦だけは、体調が悪くても何があっても絶対果たしてやる」というか、そういう気概はありますか。

 

高山 これは、リングに上がるときの心構えだけど、「何々をしてやる」という征服する感じではなくて、単純に言えば、「笑われないようにしなくちゃ」っていうことかな。

 

伊藤 高山選手は、新弟子時代の自分の経験を踏まえて、下積みの重要性をどのように捉えていますか?

 

高山 自分が下積みだったときは、もちろん「不条理だ」と思ったし、「こんなものいらねえんじゃねえか」と思っていた。先輩に対して腹が立ったし、「デビューして強くなったら、殴り返してやろう」と思っていたね。でも、そういう情熱を作るために下積みはいい期間だったなって、あとから思った。そのおかげで、自分は今の位置にいられるわけだし。「若いときの苦労は買ってでもしろ」という言葉があるけど、これは本当だと思う。ただ、苦労の仕方を間違えないようにしなきゃいけない。無意味に、ムダな苦労をしている人もいるからね。

 

伊藤 ご自分の花道というか引退の時期をイメージされていますか? 

 

高山 一日でもプロレスを長く続けることかな。「もう要らないよ」って言われるまでは、パンツ一丁でリングに立ち続けたいと思っている。やっぱり、プロレスが好きなんだよね。

 

伊藤 では、最後に高山さんの夢を聞かせて下さい。

 

高山 うん、まだ夢の途中だからね。

「まだ、夢の途中だから」


幾つになっても、そんな言葉をスラッと言える男でいたいものだ。