
さて、みなさん。
この方を覚えているだろうか。
以前平井医師
というタイトルでブログを上げたが、それをご覧になった方は分かると思う。
私の娘はNanioといって、ハンターランク8のG級狩人だった。
彼女は、一時期、人間界でいうセーブが出来なくなった。
そこで私は、人づてに聞いた「金は取るが必ず病は治す」という闇医者平井医師の元を訪ねたのだ。
だが、平井医師は驚く事に医術を放棄。
事の果てにはこんな腹立たしい顔をしてくる始末。

「無理じゃボケー」の図
そして、私はこの医師のせいで、希望を失ってしまった。
もうNanioは助からない
もうNanioは帰ってこない
深い海の底で、毎日涙を流しているような気分だった。
だから海はしょっぱいのね…
で、だ。
それでNanioは結局どうなったのか——―――

なんと彼女は復活したのだ!
私が落ち込んでる事を必死に気にかけてくれた人々、
否!
Nanioに助けられた人々が私に次々に声をかけてきてくれたのだ
そして、有志達のがんばりがあり、Nanioは復活を遂げたのだ。
そこで、私は心の奥底に降って湧いた有る気持ちに気付いた。
それは「怒り」という名の感情だった。
何故、助けてくれなかったのか
何故、見捨てたのか
何故、あんな顔をするのか
私はその怒りを心という名のスーツケースに詰め込み平井医師の元へ持ち込んだ。
私「」 平井医師『』
綺麗に整頓された会社内の一室で、平井医師は活動していた
『次の方ーどうぞ』
私の事だ。
私はNanioと共に診察室と呼ばれる一室に入った。
「あの、お久しぶりです」
診察室にある椅子に腰をかけて私はそう言った。
平井医師はこちらをちらり、とみやると
『えーっと』

と言って言葉を詰まらせた。
もしや…!
私は嫌な予感がした。
こいつ、こいつ私の事ーーー
『どちらさんでしたっけ?』

覚えてねー!!
な、なんて奴だ!
あんなに適当な医療を施しておいて…
その上覚えていないとは…!!
なんて奴なんだ!!
「お、覚えてないんですか」
『……』

私の質問に答えるのを拒む様に携帯を見始める平井医師。
(しかも少し笑っている 愛妻からのメールのようだ)
「覚えてないんですね」
語尾が少し強くなった。
抑えていた怒りが喉の奥まで来ている。
『いや…覚えてるわ』

「ーーえ?」
『覚えてるで。Nanioの育ての親やろ?』

またしても携帯を見る平井医師
「ん?」
もしやコイツ…
私は咄嗟に平井医師の携帯を取り上げた!
『ちょ!何すんねんお前!』
「ちょっと貸しなさいよ!!!」

注・写真はイメージです
『あっ!』
「あぁ!」
思った通りだ。
携帯の中に映し出されていたのは私のブログだった。
平井医師は私のブログを見てあの日の事を思い出そうとしていたのだ
だからうろ覚えのような話し方だったのか!!
『返せや!!!』
「あぁっ!」
平井医師は私の手から携帯を取り上げると大事そうに胸に抱いた。
『もー、ピカピカの携帯やねんからあ』
私は頭の中で切れる何かに気がついた。
「あなた…忘れてたんですね?」
いつの間にか、怒りの感情は呆れに変わっていた。
『な、何がやねん…』
(チっ、バレてもうたわ)

「もう結構ですわ。アンタみたいなヤブ医者」
私はそう言うと椅子から立ち上がり、診察室から出ようとした。
「それじゃ。もう二度と会う事は無いと思いますけどね!!」
ガチャッ…
『ちょ、ちょっと待てや!』

『あ、あんときは俺もな、ホラ悪いと思ってんねん!』
「は?」
『ホラ、なんて言うの?虫の居所が悪いっちゅーかなんちゅーかな』
「…」
『今からでも遅くない!俺が、おれがNanioを直したる!』
「…本当にヤブ医者だよあんたは」
『え?』

「もう治ってんだよ。うちのNanioはよ」

『ほ、ほんまや…これ!どういうことやねん!な、ど、どうして!!??』
「お前に言う必要などない」
『頼む!頼むから!』
「いーやーじゃー!」
『頼む!なんでもするから!!』
「なんでも?」
『…な、なんでも…』
「じゃあ、G級クエスト一緒に行って」
『そ、そんなのお易い御用や』
(フッ、ハンターランク8のへなちょこハンターが)

「え?今なんか言った?」
『いや!何も無いっす!なんも言ってないっす!』
「ふーん。じゃあ、やるよ。ホラ、PSP出して」
『はいはい…えーっと、あ』
「ん?」
『すまん』
「え?」
『今日PSP家に置いて来てもうたわ…すまん』
「なにぃー!!!???」
『ほんまごめん!』
結局後日一緒にクエストをやるという約束を交わし、その日は帰る事にした。
そして、私は今日も、Nanioと共に前に突き進んでいく。