職業柄、お花をいただくことがとても多い。
コンサート、お芝居、パーティ、誕生日、クリスマス……

母も私もお花が大好きで、今、母の部屋はお花畑のようでとても綺麗。
遺影もニッコリ微笑んでいるように見えてくる。

何十年も前の、ある場面をハッキリ覚えている。
1982年は「国際障害者年」だった。
これは、障害の有無にかかわらず、人格と個性を尊重し、共生する社会を目指すのがテーマだった。

日本では「われら人間コンサート」が開催された。

主催者は、秋山ちえ子さん(評論家)、井深大さん(ソニー創業者のひとり)、永六輔さん(放送作家、作詞家)、松山善三さん(映画監督)だった。

集ったメンバーは、障がい者、健常者、そしてプロアマ問わず、ミュージシャンが垣根をはずし楽しいコンサートが催された。
全国各地でボランティアも参加し、10年くらい続いただろうか。

その中のひとり、全盲のピアニストの言葉が忘れられない。
東北のツアーの最中だったと思う。
花束を抱きしめて移動している彼に

「ねェ、どうして花束持ってるの?東京に着くまでに枯れちゃうわよ」

「僕、生まれて初めて花束もらったんです。嬉しくて、嬉しくて……母に見せてあげたいと思って……」

「そうね。お母様、感激されるわね。私、ホテルでお水につけておいてあげる」

「ありがとうございます。母どんなに喜ぶかと思って……」

私は胸が熱くなった。

仕事柄、小さい時からお花をいただき、少し慣れっこになっていた自分がいた。
ツアー中はよかれと思い、沢山のお花は現地のスタッフ、受付の人、ホテルの方にあげていた。
私は、今でも彼の言葉を大事にしている。

コンサートの時は自分用に2つ3ついただき、想い出に写真を撮る。
後はスタッフ、キャスト、お客様にも少しずつお渡ししている。

この間、女性に私の花束をおすそ分けしようとしたら

「いらない!家に花瓶がない!」とか、

「ネズミが出る!」など。

そういえば大昔、楽屋でネズミに花を食べられたことがある。

「お酒ならいただくけど、花いらない!」や

「あのね、寝る所なくなるから!」という人も。

部屋を散らかしているのが悪い。
なるほどね。
すべての女性が花を好きだとは限らない。

私はいつまでも花をいただいてふさわしい女性でいたいなー。(>v<)エヘ

ある晩、ディナーショーの後、花束を3つ抱えていた。
高齢のタクシー運転手さんに

「いただきものですけど、いりませんよね」

「アッ、いただけるのなら、もらいますョ。女房喜ぶなー」

玄関に入るまで、見送ってくれた。

「ありがとう。初めてもらった花束が松島トモ子さんで嬉しいなー」

いつまでも、花束を振ってくれていた。