火をかけたヤカンが「ピーッ」と音を立て怒ってる。
少し前の僕なら「静寂を取り戻そう」なんてダサいことを考えてたのかな、僕は紅茶をいれようと立ち上がる。
静かな部屋の中に必要なものは、君と僕と少しだけの本当のこと。

いろいろ考えてる、僕だって僕なりに。
今までのこと、これからのこと。
溢れそうな水槽に色を落とすイメージ、順番は青、黄色、赤。
ぽんぽんぽんって、一滴ずつ、「涙みたいに」なんて言ったら痛すぎて笑われてしまうので「ラー油みたいに」ささっと感覚的に。
上手く混ざって綺麗なのは数秒間、ゆっくりと夜が来る、水槽の中にも。

想像することでそれなりの準備や心構えを繰り返して、何事もなかったかのように一日を終えるのが理想だよ、本当は。
嬉しかったことや、悲しかったこと、いろんなことがあるんだけど、もったいないから全部は言いたくない。
だけど聞いて欲しいから、歌なんか作ったりして、誰かに聞いてもらってホッとしてる僕もいるから「なんだかよくわかんねーな」と思う、心から。

火をかけたヤカンが「ピーッ」と音を立て怒ってる。
少し前の僕なら「溜息の究極系だな」なんてダサいことを考えてたのかな、僕は紅茶をいれようと火を止める。
魔王を倒した勇者の気分だよ、もとに戻ったら戻ったで少しだけ寂しい。

やっぱり静かな部屋の中に必要なものは、君と僕、そして少しだけの本当のこと。