昨日は、飽きるまで空を見てた。
長い坂道を上って、小さな町が見渡せる場所でひとり。
お弁当とお茶、煙草とコーヒー、とにかく飽きるまで空だけを見ようと思ってた。

空は広かった。
空の上がどうなってるかなんて、考えたら怖くなるくらい広かった。
風の音は虫の声を運び、流れる雲は心地良く、大きな入道雲が青を彩る。

どれくらい見てただろう。
空が少しずつ赤くなりはじめたころ、鳥みたいな形をした雲が流れてきた。
いや、飛んできた。
羽ばたくこともなく、スーっと静かに飛んできた。
「すげーなー、鳥だ!鳥だ!」って心の中で騒いでいたら、あっという間にトンボみたいな形に崩れた。
残念だったけど、トンボは真っ赤な夕陽に照らされて、僕に秋の始まりを教えてくれているようだった。

やっぱり空には届かない。
それで良かったんだよ、そこから生まれる美しさ。