千粋です。

今日は寄席のおはやしのお仕事から。
お付き合いよろしくお願いいたします。

「紙切り」
上方には、今はもう、紙切りさんはいらっしゃらなくて、紙切りの下座を勤める機会はほぼ皆無。先日初めて!紙切りの方と一緒にお仕事させていただきました。
紙切りは伝統芸能で、寄席では貴重な色物さんです。(色物:寄席で落語講談以外の芸をする人)
一枚の紙と鋏を使って、一筆書き状に形を作る。お客さまからリクエストをいただくので、お題は多岐にわたります。中には形にしにくいお題もあり、頓知を利かせて具現化したり、切っている間もお客さまが退屈されないようおしゃべりをしながら、即座にその場で切り抜かれるのです。
目の当たりにしますと、やはりかなりすごい!カミワザ!
おはやしは、そのカミワザを、ただ感心して見ているわけにはまいりません。切ってはる間、曲を演奏するのです。お題に因んだものを弾けたら、というおはやしとしての矜持がございまして、リクエストの声を聞き、瞬時に弾く曲を、ない頭で懸命に考えます。ストレートにドンピシャな曲があればいいのですが、ないときは連想ゲーム。脳のブドウ糖消費が増える瞬間。なんにもわかないときは、とりあえず、なにか弾きます😅紙切りのおはやし、脳トレになります。

お江戸からお越しになった林家楽一さん
広報のためにラジオで紙切り(リスナーの皆さんには見えないのに)
お題は、DJのお姉さんから「盆踊り」
曲は「堀江盆踊唄」
好きな曲のひとつ。
ちなみに、紙切りの仕上がり、こんな感じ🎵表装して飾っておきたい!作品は、リクエストした方が、もらえるのですよ!
楽一さん、飄々と「間」の不思議さがとても魅力的な方でした。ありがとうございました。


では、堀江盆踊唄について、歌詞など少し✏︎

《堀江盆踊唄》
それぇそれぇのやっとや
(ヨーイ ヨイヨイ)
かんてき割った すり鉢割った エーノー 叱られた
(おかして たまらん)
ソレ西瓜 ソレ真瓜 エーノー 焼け茄子
(食いたい 食いたい)
ソレ堀江 ソレ廓 大江の 里げしき
(名どころ 名どころ)

竹にサーエー ヤッチキドシタイナ オサ
竹に雀は 品よく止まる (ヨーイヨーイ)
止めてサーエー ヤッチキドシタイナ オサ
止めてとまらぬ こいつぁまた 色の道(ヨーイヨーイ)
色でサーエー ヤッチキドシタイナ オサ
色で迷わす 浅漬けなすび(ヨーイヨーイ)

春 影うつす 春の水 堀江は 都鳥
(この花 この花)
夏 涼しさの 四ツ橋の 川岸 糸柳
(夕風 夕風)
秋 阿弥陀池 澄み渡る 真如の 月の顔
(和光寺 和光寺)
冬 梁棟木 松檜 咲く 雪の花
(朝市 朝市)

花にサーエー ヤッチキドシタイナ オサ
花に柳で いろどる廓(ヨーイヨーイ)
染めてサーエー ヤッチキドシタイナ オサ
染めて染めましょ こいつぁまた 濃く浅く(ヨーイヨーイ)
月にサーエー ヤッチキドシタイナ オサ
月を鏡に こいつぁまた 夕化粧(ヨーイヨーイ)

四ツ橋の下のつなぎ橋から西に入って南下すると、堀江の遊廓があり、その西に俗に「阿弥陀池」と言われる「和光寺」がある。境内の阿弥陀池は、敏達天皇の朝に、百済から渡来した阿弥陀三尊の仏像を、物部守屋、中臣勝海等が投げ捨てた堀江である。その仏像が、ここを通りかかった、本田善光に呼びかけ、善光の手に拾われ、信州善光寺本尊となったことは隠れもない事実である。
朝市は植木市で名物のひとつ。故市川右団次が、堀江油屋の松王という芸者(わざわざ神戸から、右団次恋しさに堀江へ鞍替えした)に感激して、朝市の松を全部買い占めた逸話がある。また堀江には、三月十五日初日で開いた「この花踊り」があった。
(田辺聖子が訪ねた上方お座敷唄レコードライナーノーツより)
また落語では、和光寺に関係した噺に「お血脈」「阿弥陀池」がある。