青沼 智・池田理知子・平野順也(著)『メディア・レトリック論 --文化・政治・コミュニケーション』(ナカニシヤ出版)を<失礼ながら>ざあっと拝読してからだいぶ経ってしまいました。
研究者でない方にも、読みやすくて、深い思索をするのに好著だと思います。
特に著者の一人である池田理知子氏の筆力は優れています。
その池田氏は、キャッチボールの比喩で説明できるものではないとしたうえで、「他者との関係性により意味が構成されるプロセス」とコミュニケーションを定義しており、小生の定義にとても近いのです。
筆頭著者の青沼 智氏は、レトリックを<ことばの技術を駆使し「説く」=「演じる」こと(演説)>と説明しています。そして、日本語教育の重鎮だった水谷修氏の「日本人は人前に出て話すことが意外と好きなのかもしれない」の考えに同意し、この考えを裏付ける例をたくさんあげ、<私たちの日常は信じがたいほどレトリックに満たされている>のにもかかわらず、<ことばの技術を駆使したさまざまなパフォーマンスを、必ずしもはっきりとレトリックとして認識してはこなかった>ことを嘆いています。
英語に関しては、平野順也氏が、「ラテン語のようにローマ以来の学術や宗教といった確固とした規則性に拘束された言語ではなく、もともとは島国の人びとの俗語すなわち『大衆言語』」としたうえで、英語の「簡潔性」もしくは「大衆性」が世界に流布した背景にあったと論じています。
一読をお勧めします。
See you.
Shigeru
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