松宮宏 プロフィール | 小説の周辺

松宮宏 プロフィール


松宮宏


大阪市出身
大阪府立生野高校~大阪市立大学文学部卒業(心理学専攻)
若かりし時アパレルビジネスに出会い、現在「昼間」は顧客コミュニケーションデザインや店舗空間のデザイン開発を生業としている。デザインの仕事では世界を回ることが多く、イメージ開発のためデザイン先進地はもちろん、砂漠のネイティブアメリカン保護区やアーミッシュ村、ヨーロッパのヒッピー地区、蘇州の町、アフリカのメディナとか、謎めいたことをサンプリングし、からだに取り込んでいる。所在不明の事が多いが、朝の代々木公園でラジオ体操をする姿も目撃される。
空間デザインのコンペ「ワールドスペースクリエーターズアワード」(審査委員長:深澤直人氏)のプロデューサーでもある。
旅行中は、だいたい藤沢周平かエルモアレナードの古本を読んでいる。


作品の周辺

「こいわらい」は京都でカタログを撮影の仕事をしたときに書き留めた日記がはじまり。
路地を知りつくす京都のカメラマン甲斐さんと京都を歩き回ったことで、しなやかな風景が心に染みた。
メグルという主人公をひねり出したわけだが、書き出すとメグルが僕を引っ張りはじめた。
2000年度の新潮社ファンタジーノベルズの最終選考作品になったが、紆余曲折の末マガジンハウスから出版。2007年の東京国際映画祭で日活から日本語・英語で世界の映画関係者に向けてプレゼンされた。
翌年に第2作となる続編「燻り亦蔵」刊行。
舞台はニューヨーク。書き始めた頃、大統領がクリントンだったがブッシュに代わった。同時多発テロでワールドトレードセンターも消え、ニューヨークの人の心が変わったのを知った。メグルが用心棒として乗り込むニューヨークは、悲しみを乗り越えながら、人の心が優しくなっていく時期。
ソーホーグランドホテルで部屋の窓を開けたその先に、ツインタワーがそびえ立っていた景色は今も覚えている。今、その空には何もない。
このシリーズは第3部も完成している。メグルが北朝鮮の特殊工作員と二条の河原で決闘する。かなりの長編で、読み応えはいちばん。原稿を読んだ何人もが徹夜した。

2009年には「はるよこい」(PHP研究所)刊行。
これは2002年、第1回「このミステリーがすごい」ベスト10ノミネート作品。選ばれた作品がインターネットでの読者投票で順位を決めるやり方の第1回めだった。投票が始まるとトップを走ったが、中間で書評家が妙な評価をし、他の作品をほめたので、一気に逆転された。

反省するところは反省し、めでたく日の目を見た。いろいろ叩かれるのはいいことで、中身はぐっと充実した上での出版となった。麻薬の話がベースになっているが、昨今の、若者が安易にマリファナに手を出す風潮を情徴するものではない。薬を回春薬と勘違いしたやくざの親分の死に様を読めば、手を出そうなどと思う読者はいないはず。


小説の技法

どうやって思いつくのかと、よく訪ねられる。筋を決めてから書くのですかと。
書き出したときに結末は見えない。スティービーワンダーが曲を作るとき、「まずリズムがある」ということが感覚的に近い。冒頭のシーンがヴィジュアルで浮かぶことも大切で、30ページ分ほど頭に中に溜まれば書き出せる。ドラフトから第二稿へ進みながら、自分のこころを開く。読み手に立つ。人の意見を聞く。プロットをの整合性を取る。複雑にしたり単純にしたり。スティーブンキングの「小説作法」を読んでみると、同じようなことが書いてあった。言ってみれば、僕もスティーブンキング的な作家かもしれない。
彼と同じく、エルモアレナードやジョングリシャムが好きである、僕の場合はそこに藤沢周平が加わる。



松宮宏 小説集

・和爾メグルシリーズ

第一話 こいわらい 560枚
2006年 10月19日初版(マガジンハウス)

脳障害を抱えた少女メグルであるが、棒を持つと無想剣となる。
剣術遣いとしての才能が開花した。ミステリアスな大金持ちのパトロンに支えられ、秘剣と勇気をもって最強の敵に立ち向かい、破産した家を再興する。
剣術+サスペンス、京都を舞台にした雅にあふれる冒険小説。


第二話 燻り亦蔵 478枚
2007年 7月19日初版(マガジンハウス)

路上喫煙が全面的に禁止になったニューヨークで、58歳のリストラ社員亦蔵はタバコを吸い続け、逮捕され続ける。行動は注目を浴び政治家やマフィアに狙われる身となる。
アメリカは先の見えないアフガニスタン戦争へ投入、亦蔵は最後の出所を迎える。
終身刑目前の亦蔵を殺し屋が狙い、用心棒としてメグルが派遣される。
メグルは秘剣を駆使し、亦蔵を救う。ワシントンやFBI、マフィアを巻き込んだ少女大活劇。


第三話 チャーリー芸能事務所 690枚

北朝鮮のスパイに命を狙われるタレントの秋山ミフユをメグルの剣が救う。
ヤクザ、芸能界、身体障害者、朝鮮帰国者など、さまざまな人生模様を持つ人間が交わりあって、優しさを醸し出していく。
池波正太郎の「剣客商売」司馬遼太郎の「燃えよ剣」の決闘シーンが現代の女性剣士によって蘇る。
謎の国、北朝鮮の抱える問題を下敷きにした社会派サスペンス。