松稔の芸能裏話(77) TBSドラマ犯人役で出演
TBSドラマ２２『宇宙刑事シャッチ』と云う番組に犯人役で出してもらった。
主役が高嶋政宏さんで、普段はサラリーマンだが事件が起きると、ウルトラ
マンになると言う面白い設定だった。
僕が犯人役だった。今まではワンシーンだけだったけど、今度はほとんど出ずっぱりで、
台詞も多かったし、重要な犯人役でした。
日本を滅ぼす為にプロトニウムを全国に撒き散らし、日本人を皆殺しにすると云う内容。
ドラマの撮り方は台本の順番に撮るのじゃなく、タレントさんのスケジュールの都合とか、
ロケ先の都合とかでバラバラに撮る｡
だから、今どのシーンでどう云う演技をしたら良いのか混乱してしまう。
最初のロケは、いきなりラストシーンからだった。
川崎から木更津のフェリーで犯人の僕が、プルトニウムで汚染されて、
自ら病気になり血を吐きながら逃げている。
そこにウルトラマンが、現れて戦うシーンだった。
フェリーで川崎から木更津に着くまでに、このシーンを撮り終わらないといけない。
NGが許されないのだ。そう思うと、すごく緊張した。
この時、初めて血のりと云うものを経験した。
メイクの方が『血のりは何味が良いですか』と聞いてきた。血のりに味があるのを知った。
オレンジ味・イチゴ味どれにしますか？
最初は気持ち悪かったが結構美味しいイチゴ味だった。
結核患者のように咳きこみながら血を噴水のように吐くシーンで、
血のり含んだままスタンバイしていた。
しかし、ウルトラマンの用意が出来てなくて、すごく待たされた。
口の中の血のりが喉の奥に入って一寸ずつ無くなってきた。
本番が始まる頃はほとんど無かった。それをメイクの人に云おうと思っても側にいない。
本番の掛け声がしたので仕方なく演技をした。
しかし血を吐き出すシーンで何も出なかった。『カット、血を吐いて』と怒鳴られた。
時間が無いのにNGを出してしまった。
2回目は上手くいって、木更津に着くギリギリに撮り終えた。
次の日は、竹ちゃんと梅ちゃんの水死体の役からだった。
台詞が一言も無く、冬の寒い日に川の中で浮いているのは可哀想だった。
僕は深夜にピストルに撃たれて川に落ちるシーンだった。
橋の上から警察に向って、日本を滅ぼす理由を原稿用紙5枚分喋って撃たれる。
ロケバスの中は暖かかったが、外に出たら手足はかじかみ、口が思うように動かない。
それにピストルで撃たれて、川に落ちる。
これはスタントマンがやるのだが、NGを出したらスタントマンが何回も落ちなくてはならない。
それが大きなプレシャーになった。
監督の『本番』と云う声が掛った。なんと一発OKだった。
良かった、ほっとした。
ロケバスに戻って着替えをしていたら、スタッフの人が『今度は同じシーンを横から撮りますのでスタンバイして下さい』
終わったと思った瞬間に安心して、台詞全部忘れてしまった。
どうしよう・・・台本を読み直したが今更、頭に入らない。
『本番』の声が掛った。
仕方なく本番に挑んだ、案の定台詞が飛んでしまった。『OK』の声が聞こえた。
間違ったことを云えば撮り直しになる。
云おうか云おまいか迷ったが、スタッフの人達はせっせと片付けだしたので言いそびれた。
後で聞いたら横からの絵が欲しいだけだった。だから台詞は関係なかったそうだ。
心配して損をした。このドラマに1週間かかった。朝早くから夜遅くまで、
ドラマの大変さが分かった。
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