博士課程
それは孤独な道であり,
先の見えない道であり,
小さな石や沼,大きな壁や深い崖があり,
いつも靄や霧がかかっていて,
夏の様に青天の中に太陽があるような,
開放的な空間はない.
油のにおいがする工場,
重たくて冷たく時に熱いあらゆる金属,
もろいようで強いプラスチック
思い通りの性能を魅せてくれない.
こんな毎日が365日続いている.
僕らがなぜこの研究をおこなっているのか
世の中のため,日本の技術の発展のため,
この研究の第一任者になるため,
自分はすでに社会の歯車に組み込まれている.
いや,実はもう自分は自分の自由が無くなっている.
新しく挑戦したいことがある.
達成したいことがある.
ネットワークを広げ自分の知見を広げたい.
多くの明るい未来が沢山広がっている.
でも,人間の生き続けたい本能はそんなところにはない.
ご飯食べて寝てお金を稼ぐことで精いっぱいだ.
自分を高め続けたい,
目標を乗り越えたい,
そんなの一人では乗り越えられない.
やっと気が付いた.
こんな自分が自分でいられるのはいつまでだろうか.
これが大人になっていくことなんだろうか.
多くの人が生きていく中で障害を有し,
そして鬱になり知らない間に社会から消え去る.
なんたる悲しい事実であろうか.
笑顔や愛想をふりまき,上の人の機嫌をとらなくちゃいけない
その度自分は都合のいい無償の労働者となる.
ひとは社会勉強だという.
確かにそうだろう.
しかしその言葉には,思いやりも愛もない.
世の中自分に都合のいい人ばかりだ.
自分の欲求を満たすために
生きていられる.
自分の欲求を棚において,
人のために生きていける人が
一体どれだけいるだろう.
自分が生きてきた限りそんな人はいない.
いちいちやることに目的なんか考えちゃいけない.
意味を持たせちゃいけない.
人の心の中を覗いちゃいけない.
なるべく興味をもたないようにしなくちゃいけない.
研究は物と対峙するものではない.
人とのコミュニケーション.
本を通した過去との会話
そして学びの連続と発見だ.
そこには必ず人がいる.
僕は働いている人たちが心を病んでいるようにしか
見えない.
夜空を見上げて星を眺めながら帰ると
心がおちつく
そうだバカを演じ続けよう.
楽に生きられるように.
