と、お願いを受けることがあります。

ご本人ではなく、ご家族さんがおっしゃる場合がほとんどです。

例えば、「子供さんが一日中ゲームばかりしており、発達障害を疑わせる特徴があるから、なんとかしてほしい」、「発達障害が疑われる配偶者の言動や行動を正して欲しい」「薬を飲ませて治して欲しい」といった内容です。

 

おそらく、「病院は病気を治してくれるところだ」というお考えのもと、こうしたお願いをされるのだと思います。その発想は間違いではありません…というか、基本的に正しいと私も思います。

しかし、それは「精神科以外の診療科」でのお話です。胃が痛いから消化器内科で診察を受けて胃薬をもらう、骨折をしたから整形外科で手術をしてもらう、といった風に。

とはいえ、「精神科は病気を治すところではない」「精神科が病気を治さない」のかというと‥もちろんそうではありません。

 

‥なんだかわけがわからなくなってきましたね。

 

どうしてこんな回りくどい言い方をするのかというと、「発達障害は“治療”するものではない」こと、そしてその背景に、「精神科の他の診療科との決定的な違い」が関わっていることを説明したいからです。

これについては複数の事情が絡まっており、説明があまりにも長くなりすぎるため、何回かに分けて私の思う「精神科と他の診療科との違い」、そしてそれに関係した「発達障害と診断すること」について、少しずつ記載していきたいと思います。

 

まずは、前置きの話です。

 

先日のニュース(https://mainichi.jp/articles/20210628/k00/00m/040/161000c、リンク切れの可能性あり)にて、とある認可外保育施設の規則にこのような文言が記されていることが指摘されました。

 

“第17条(発達障害)

園児が自閉症、注意欠陥・多動性障害などの発達障害と診断され、または園児にその恐れがあり、登園にて今後の園生活や体育全般に支障があると判断される時は、子どもの成長、発達を考慮し特別支援教育への移行を促し、退園していただく場合がある。“(毎日新聞『「発達障害の子、退園も」保育施設の規則に 差別解消法抵触の恐れ』2021年6月30日より引用)

 

私としては、穏やかならぬ心中です。また当事者やそのご家族におかれましても、ショックを受ける方は少なくないのではないでしょうか。

 

この文章が不適切とされる理由について、「差別だから」と考える方もいらっしゃるかもしれませんが、私としてはその答えは‥半分イエスで半分ノーです。

 

「一定の対処をしても特定の問題行動を繰り返してしまうお子さんについてはお預かりすることができない」とすれば、それはやむを得ないことだと思います。園のキャパシティや人的資源の問題は当然あるでしょうし、それに伴って二次的にほかのお子さんの保育へ影響が出ることを懸念するのも、自然な考えだとは言えるでしょう。

 

しかし、それは「発達障害の有無」とは関係がないはずです。

 

問題行動がある=発達障害、ではありません。もちろん発達障害と診断される方に問題行動が認められることはありますが、発達障害でなくても問題行動がある方は大勢いらっしゃいますし、発達障害があっても問題行動をとらない方もまた大勢いらっしゃいます。

厳しい言葉になりますが、園側が「発達障害」という条項をわざわざ作成してまでこのような文言を規則に追加することは、私にはただの「悪意のあるレッテル貼り」にしか見えません。本来、その子どもさん個人の事情に応じて園が、保護者および子どもさん本人(および場合によっては医療機関)と相談し、双方が主体性を持って考えるべき内容を、「発達障害」という診断名のもと、保護者や子どもさん本人および医療機関に一方的に押し付けているように思えるのです(しかも”子どもの成長、発達を考慮して”という、子どもさんのことを第一に考えているかのような表現を隠れ蓑にしているところが、尚のこと悪質に感じられます。この文章を作成した方が発達障害をもつお子さんのことを真に考え、関心を持ち、保育の責任者として足るだけの誠意ある対応をすべく努力しているようには、私には到底読み取れません)。

 

さらに、この規則と無関係の保護者や保育園関係者がこの文言を目にした場合、「発達障害」=「問題行動、特別支援教育」という誤った刷り込みがなされてしまう可能性もあるでしょう。「保育園の規則にこうやって書いてあるくらいなんだから、発達障害がある子どもは必ず問題行動を起こすんだ、そして特別支援教育を絶対に受けるべきなんだ」…と。

 

続きます。