中国の対日協調派を追い詰めるな
21日、中国の胡正耀外務次官補が前原誠司外相を名指しで批判した。胡次官補は21日の記者会見で、中国に厳しい姿勢を取る前原外相について「毎日のように中国を攻撃する発言をし、口にすべきでない極端なことも言っている」と述べた。
中国の政府内部では対日協調派と強硬派がせめぎ合っているのではないだろうか。中国はブリュッセルで日中首脳会談に応じたかと思えば、最近は反日デモを裏で画策するなど、対日政策が定まっていないように見える。恐らく、対日協調派と強硬派がせめぎ合っている結果だろう。
中国外務省はその中で協調派ではないかと考えられる。中国漁船の船長が日本側に拘束されたとき、中国北京では抗議デモが起きたが、デモ隊は中国外務省にも向かった。対日政策が弱腰だと批判されたのである。中国政治の内情は明らかではないが、この点から察するに中国外務省はむしろ協調派ではないかと考えられる。
中国外務省は対日融和の努力を無にする前原発言に苛立っているのだろう。中国外務省は軍や石油閥など、尖閣諸島周辺に権益を持つ強硬派を何とかなだめようとしている最中なのではないか。ところが前原外相が強硬派を刺激する発言を続けるために努力が台無しとなり、それで苛立っているのではないかと想像される。
前原外相はその点を意識して、中国において対日協調派が優位になるよう発言に注意すべきである。同じ内容のことを人を怒らせずに言うことは可能であるし、外交のトップである以上、そうでなければならない。前原外相が中国からの批判に対して反論せず、自重した点は賢明であった。
前原外相に限らず、民主党政権は中国が一枚岩ではないこと、権力闘争があること、対日協調派と強硬派がせめぎ合っていることを想定し、どのようにすれば協調派が優位に立てるかということを第一に考えて対中政策に取り組むべきである。相手が何か言ったから言い返す、相手が強硬だからこちらも強硬でいくといった単細胞な対応では、日本の真の敵である対日強硬派を結果として応援することになる。
中国の政府内部では対日協調派と強硬派がせめぎ合っているのではないだろうか。中国はブリュッセルで日中首脳会談に応じたかと思えば、最近は反日デモを裏で画策するなど、対日政策が定まっていないように見える。恐らく、対日協調派と強硬派がせめぎ合っている結果だろう。
中国外務省はその中で協調派ではないかと考えられる。中国漁船の船長が日本側に拘束されたとき、中国北京では抗議デモが起きたが、デモ隊は中国外務省にも向かった。対日政策が弱腰だと批判されたのである。中国政治の内情は明らかではないが、この点から察するに中国外務省はむしろ協調派ではないかと考えられる。
中国外務省は対日融和の努力を無にする前原発言に苛立っているのだろう。中国外務省は軍や石油閥など、尖閣諸島周辺に権益を持つ強硬派を何とかなだめようとしている最中なのではないか。ところが前原外相が強硬派を刺激する発言を続けるために努力が台無しとなり、それで苛立っているのではないかと想像される。
前原外相はその点を意識して、中国において対日協調派が優位になるよう発言に注意すべきである。同じ内容のことを人を怒らせずに言うことは可能であるし、外交のトップである以上、そうでなければならない。前原外相が中国からの批判に対して反論せず、自重した点は賢明であった。
前原外相に限らず、民主党政権は中国が一枚岩ではないこと、権力闘争があること、対日協調派と強硬派がせめぎ合っていることを想定し、どのようにすれば協調派が優位に立てるかということを第一に考えて対中政策に取り組むべきである。相手が何か言ったから言い返す、相手が強硬だからこちらも強硬でいくといった単細胞な対応では、日本の真の敵である対日強硬派を結果として応援することになる。
中国の態度に一喜一憂すべからず
言葉などの表面的な態度の観察を分析の中心とする手法は危うい。日本が中国漁船の船長を釈放した後、中国は日本に謝罪と賠償を要求する一方、日中関係を重視する姿勢も見せた。マスコミや識者は中国側の方向転換を感じ取り、実際、中国はその後、強硬な態度を改め、日中首脳会談にも応じた。だが、孫子の言葉にも「辞の卑(ひく)くして備えを益す者は進むなり。辞の強くして進駆する者は退くなり」とあるように、強硬姿勢を見れば恐れ、柔軟姿勢を見れば油断するというのでは自ら進んで中国の策略にはまるというものである。
我々が見なければならないのは表面的な態度ではなく、実際の行動である。中国はときには柔軟であり、ときには強硬であり、我々はそれに振り回され、一喜一憂している。しかし、そのような表面的な態度ではなく、その行動を見れば、中国は一貫して軍事力を強化し、世界中で資源確保を進めている。それに気がつけば一喜一憂どころか憂しかないことが分かろう。
民主党政権は中国の柔軟姿勢に安堵してしまっているようにも見えるが、これではだめである。中国柔軟化のきっかけを作ったのは戴秉国国務委員と話を通じた仙谷官房長官であろう。仙谷官房長官はこれを自分の功績と勘違いしたのか、最近はやたらとでしゃばり、野党から「仙谷内閣」と揶揄される始末だが、民主党政権は緩みすぎていないだろうか。日本が安心していいのは中国が軍縮し、資源争奪戦から手を引いたときのみである。
我々が見なければならないのは表面的な態度ではなく、実際の行動である。中国はときには柔軟であり、ときには強硬であり、我々はそれに振り回され、一喜一憂している。しかし、そのような表面的な態度ではなく、その行動を見れば、中国は一貫して軍事力を強化し、世界中で資源確保を進めている。それに気がつけば一喜一憂どころか憂しかないことが分かろう。
民主党政権は中国の柔軟姿勢に安堵してしまっているようにも見えるが、これではだめである。中国柔軟化のきっかけを作ったのは戴秉国国務委員と話を通じた仙谷官房長官であろう。仙谷官房長官はこれを自分の功績と勘違いしたのか、最近はやたらとでしゃばり、野党から「仙谷内閣」と揶揄される始末だが、民主党政権は緩みすぎていないだろうか。日本が安心していいのは中国が軍縮し、資源争奪戦から手を引いたときのみである。
中国外交の危うさ
中国の外交責任者の戴秉国国務委員の名前は最近の中国報道によく出ているので日本人の間でもいくらかは知られただろう。先月29日に訪中した民主党の細野豪志前幹事長代理が会った相手は戴氏だという。そして翌日、中国に身柄を拘束されていたフジタの社員4人のうち、3人が釈放された。また、今月4日、突如として日中首脳会談が実現したが、1日に仙谷由人官房長官と戴氏が電話で事前に調整していたという。
中国で権力を持つのは閣僚ではなくて、中国共産党中央政治局常務委員会のメンバー9人である。すなわち胡錦濤、呉邦国、温家宝、賈慶林、李長春、習近平、李克強、賀国強、周永康の各氏である(序列順)。我々日本人にとって、やや奇妙に感じられるのは中国の外交責任者が外相である楊潔チ氏でないことだろう。そこが中国の政治体制の独特な点である。
一方、戴氏の役職である国務委員は副首相格とされるが、中国では副首相といっても地位はさほど高くない。副首相の中で最も格の高い筆頭副首相である李克強氏だけがかろうじて序列7位で常務委員会に入っている程度にすぎない。
常務委員会は中央政治局のメンバー25人の中から選ばれているが、戴氏はその中央政治局のメンバーですらない。要するに中国の外交関係者は中国政界であまり力を持っていないのである。中国外交の責任者である戴氏ですら、この程度であるから、まして楊外相などを日本の外相と同列には扱えない。
ところが、軍関係者は常務委員会には入っていないものの、中央政治局には2人(郭伯雄、徐才厚の両氏)が入っており、軍との比較で外交関係者の力のなさは明白である。中国の場合、中央軍事委員会というものがあって、11人のメンバーで構成されるが、文民は主席である胡錦濤氏だけであり、残りはすべて軍人である。つまり軍は中央軍事委員会を通しても、その意志を反映させることができるわけである。要するに中国の政界においては外交関係者の地位は低く、軍より格下なのである。
中国が強硬姿勢に転じたのは外交が別の勢力からの圧力に屈したとも見られる。先月18日、中国漁船の船長が日本側に逮捕された件で北京において中国人のデモ隊が日本大使館前で抗議したが、その後にデモ隊が向かったのは中国外務省であった。翌19日、中国は日本との閣僚級の往来の停止、航空路線増便の交渉中止、石炭関係会議の延期、日本への中国人観光団の規模縮小を決定、20日には日本人大学生の上海万博招致の中止を通達、21日には温首相が「われわれは必要な強制的措置を取らざるを得ない」と発言し、23日にはフジタ社員4人が身柄を拘束された。このころからレアアースの対日輸出が事実上禁止された。そして24日に日本が中国漁船船長を釈放したにも関わらず、翌25日に中国は日本に謝罪と賠償を要求してきた。
ではどこが圧力をかけたかだが、軍と考えるのが自然ではなかろうか。恐らく中国外務省は事を荒立てることを望んではいなかっただろう。だが軍の圧力を受けて強硬姿勢に転じたものと見られる。中国海軍は海洋進出を謀っている。そこに立ちはだかっているのが日本である。尖閣諸島を領有することが海洋進出の突破口となろう。軍にとって、日本が尖閣諸島で法を執行するということは容認できないことのはずである。
別の件ではあるが、軍が外交に口出す傾向がある。馬暁天陸軍副総参謀長はアメリカが南シナ海に介入しようとしていることを非難し、羅援少将はアメリカが空母ジョージ・ワシントンを黄海に配備し、韓国と軍事演習を行うことを非難した。これについて、中国の前駐仏大使で前外交学院院長の呉建民氏は「私にとって、解放軍の将軍が外交政策について公開声明を発表することには実に驚きを感じるが、これが今日の中国なのだ」と言っている。ちなみに呉氏は尖閣諸島騒ぎで中国において対日不買運動の動きが見られた際、「理性をもって国を愛し、対日不買運動をやめよ」と呼びかけた人物である。
元々、中国において外交は軍事に劣るのであり、そういう状況下で軍が愛国的な世論に乗って圧力をかければ、外交側は屈するしかあるまい。最近、中国が柔軟姿勢に転じたのは戴氏という副首相格のお偉いさんの鶴の一声で軍を黙らせたということではない。単に中国を取り巻く国際環境の悪化に驚いた軍が自分から大人しくなったと見るべきだろう。中国では外交は軍に従うという現実に変化はないのである。
結局のところ、中国を大人しくできるのは国際社会の圧力のみである。今回、フジタ社員の釈放、日中首脳会談の実現では戴氏が汗をかいてくれたようであるが、日本側としては、もし中国と問題が起きた場合、戴氏にお願いすれば何とかなると安易に考えてはなるまい。戴氏に日中関係を決定できる政治力はない。中国を大人しくできるのは国際社会の圧力のみなのである。
中国で権力を持つのは閣僚ではなくて、中国共産党中央政治局常務委員会のメンバー9人である。すなわち胡錦濤、呉邦国、温家宝、賈慶林、李長春、習近平、李克強、賀国強、周永康の各氏である(序列順)。我々日本人にとって、やや奇妙に感じられるのは中国の外交責任者が外相である楊潔チ氏でないことだろう。そこが中国の政治体制の独特な点である。
一方、戴氏の役職である国務委員は副首相格とされるが、中国では副首相といっても地位はさほど高くない。副首相の中で最も格の高い筆頭副首相である李克強氏だけがかろうじて序列7位で常務委員会に入っている程度にすぎない。
常務委員会は中央政治局のメンバー25人の中から選ばれているが、戴氏はその中央政治局のメンバーですらない。要するに中国の外交関係者は中国政界であまり力を持っていないのである。中国外交の責任者である戴氏ですら、この程度であるから、まして楊外相などを日本の外相と同列には扱えない。
ところが、軍関係者は常務委員会には入っていないものの、中央政治局には2人(郭伯雄、徐才厚の両氏)が入っており、軍との比較で外交関係者の力のなさは明白である。中国の場合、中央軍事委員会というものがあって、11人のメンバーで構成されるが、文民は主席である胡錦濤氏だけであり、残りはすべて軍人である。つまり軍は中央軍事委員会を通しても、その意志を反映させることができるわけである。要するに中国の政界においては外交関係者の地位は低く、軍より格下なのである。
中国が強硬姿勢に転じたのは外交が別の勢力からの圧力に屈したとも見られる。先月18日、中国漁船の船長が日本側に逮捕された件で北京において中国人のデモ隊が日本大使館前で抗議したが、その後にデモ隊が向かったのは中国外務省であった。翌19日、中国は日本との閣僚級の往来の停止、航空路線増便の交渉中止、石炭関係会議の延期、日本への中国人観光団の規模縮小を決定、20日には日本人大学生の上海万博招致の中止を通達、21日には温首相が「われわれは必要な強制的措置を取らざるを得ない」と発言し、23日にはフジタ社員4人が身柄を拘束された。このころからレアアースの対日輸出が事実上禁止された。そして24日に日本が中国漁船船長を釈放したにも関わらず、翌25日に中国は日本に謝罪と賠償を要求してきた。
ではどこが圧力をかけたかだが、軍と考えるのが自然ではなかろうか。恐らく中国外務省は事を荒立てることを望んではいなかっただろう。だが軍の圧力を受けて強硬姿勢に転じたものと見られる。中国海軍は海洋進出を謀っている。そこに立ちはだかっているのが日本である。尖閣諸島を領有することが海洋進出の突破口となろう。軍にとって、日本が尖閣諸島で法を執行するということは容認できないことのはずである。
別の件ではあるが、軍が外交に口出す傾向がある。馬暁天陸軍副総参謀長はアメリカが南シナ海に介入しようとしていることを非難し、羅援少将はアメリカが空母ジョージ・ワシントンを黄海に配備し、韓国と軍事演習を行うことを非難した。これについて、中国の前駐仏大使で前外交学院院長の呉建民氏は「私にとって、解放軍の将軍が外交政策について公開声明を発表することには実に驚きを感じるが、これが今日の中国なのだ」と言っている。ちなみに呉氏は尖閣諸島騒ぎで中国において対日不買運動の動きが見られた際、「理性をもって国を愛し、対日不買運動をやめよ」と呼びかけた人物である。
元々、中国において外交は軍事に劣るのであり、そういう状況下で軍が愛国的な世論に乗って圧力をかければ、外交側は屈するしかあるまい。最近、中国が柔軟姿勢に転じたのは戴氏という副首相格のお偉いさんの鶴の一声で軍を黙らせたということではない。単に中国を取り巻く国際環境の悪化に驚いた軍が自分から大人しくなったと見るべきだろう。中国では外交は軍に従うという現実に変化はないのである。
結局のところ、中国を大人しくできるのは国際社会の圧力のみである。今回、フジタ社員の釈放、日中首脳会談の実現では戴氏が汗をかいてくれたようであるが、日本側としては、もし中国と問題が起きた場合、戴氏にお願いすれば何とかなると安易に考えてはなるまい。戴氏に日中関係を決定できる政治力はない。中国を大人しくできるのは国際社会の圧力のみなのである。
