スーパーGT菅生。
スタートしてわりとすぐにピットからの無線。
「ジャンプスタートによるドライブスルーペナルティが科せられました。ピットスルーしてください」
そのとき心の中で「オレはやっていない!」と叫んでいた。
事実、本当に犯していないのだ。
逆に、スタートライン手前でボクを抜いてしまったのはサンダーアジア君だった。
「あーあ、ダメなのに。君ペナ受けるわ。大変だね!」
そう呟き、エンジニアとの打ち合わせ通り焦らず数周のうちに抜き返した。
しかし、大変なのはオレだった。
件のドライブスルーペナルティ。
ボクらのチームは、これで今回のレースのほとんどを失った。
レース後、事情を聞くためにコントロールタワーへ。
事はすぐに判明した。
スーパーGTマシンは皆トランスポンダーを搭載している。
これがあるから、コンピューターで各車のタイミングが表示できるのだ。
スタート直後のスタートラインを通過した各車の順番もすぐに確認できる。
ある役員の方が気付きすぐにそれをプリントアウトしてくださった。
予選では1つ後のポジションだったサンダーアジア君がボクの前で通過していた。
スタートラインより手前でのパッシングは禁止。これがスーパーGTのスタートルール。
誤審だった。
ただし、裁定は覆らなかった。
順位はそのまま。
数年前、ボクはレース中に500の車両と接触し、500の車両にペナルティが科せられた。
ボクの考えでは、今でもその裁定は正しかったと信じている。
しかし、チームが控訴したためにJAFでの審議となり、覆ってペナルティは取り消された。
その結果、その車両はその年のチャンピオンとなった。
もし、覆らなかったらチャンピオンにはなっていない。
さて、今回のジャンプスタート誤審が500の車両で起きていたらどうだっただろうか?
メーカーの人たちが今回のボクたちのように簡単に引き下がるとは思えない。
過去のあの時は、本当に必死で戦ったのだから。
なにせ、審査委員会に当該ドライバーは母国に帰り欠席したにも関わらず、覆った。
世の中には真実はどうでも良い時があるのだと改めて思い知らされた。
そんなことが起こらないように。
現場で見ているオフィシャルの方々の判断が最良の判断だとボクは思っている。
だから、ペナルティを下す前にもっと精査してほしかったとは思っているけれども、
悔しいいけれども、従うべきと考えています。
そう、一度出た裁定が簡単に覆るようではいけないのです。
また、あの時のような事が起こらないためにも。
チームもボクもヨッシーも、とても悔しいけれども、受け入れなくてはいけない。