免疫力について | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

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生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

免疫力について、大阪大学大学院医学系研究科呼吸器•免疫内科学教授、熊ノ郷淳先生のお話をご紹介します。

 

医師協Mate2024; 341: 7(日本)

要約:免疫には、第一線で防御するマクロファージやNK細胞による「自然免疫」と特定の病原体を認識して排除する抗体(液性免疫)やキラーT細胞(細胞性免疫)による「獲得免疫」があります。後者を応用したのがワクチンです。新型コロナウイルスでは、初めてウイルスの設計図を注射するmRNAワクチンが用いられました。このワクチンは極めて効果的であったため、パンデミックが急速に縮小しました。抗体による免疫は、いわば「マンツーマンディフェンス」です。一次免疫応答ではIgM抗体が産生され、二次免疫応答でIgG抗体が産生されます。感染防御の観点からは、IgG抗体がどれだけ長期間維持されるかが重要です。また、細胞性免疫では、制御性T細胞が重要なや役割を担っています。その後、自然免疫のセンサーシステムが解明され、TLRのパターン認識機構が重要であることが明らかになりました。このシステムは、いわば「ゾーンディフェンス」です。一方で、TLRは生活習慣病との関連が示唆されています。新型コロナウイルス感染によるmRNAワクチンの経験から得られた情報は極めて重要であり、ワクチンを複数回接種する「ブースター効果」を証明することができました。

 

解説:新しい発見は、新たな疾患や極端な現象によりもたらされることが少なくありません。今回のお話は、新型コロナウイルス感染の経験が、人類の免疫システムやワクチン開発への大きな貢献をもたらしたことを示しています。