嬉しい報告とQ&A3957 産後出血 | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

Q 

 

2019年(34歳) 自然周期で採卵

2020年(35歳) 腹腔鏡下子宮筋腫摘出術
2021年(36歳) 2段階移植で陽性判定→心拍確認できず、流産
2022年(37歳) リプロダクションクリニックで採卵、ホルモン補充周期で移植し、2回目の移植で陽性判定
2024年(39歳) 帝王切開にて出産

☆この手に自分の子どもを抱ける日がくるとは思ってなかったので本当にうれしかったです。子育てがんばります。リプロの皆様には感謝しかありません。

出産後8日間の入院を経て退院。自宅に戻ったのですが、1日後大量出血し、また入院しました。子宮のどこから出血しているかわからず、IVRにて処置をしていただき、落ち着きました。出血箇所は子宮の右上の大動脈だったそうです。考えられる原因は何だと思われますか。

 

A 手術後24時間以内は再出血のリスクがあるゴールデンタイムとされており、その間は安静にして経過をみます。その後再出血することはほとんどありませんので、徐々に身体を動かして、元の生活に戻します。したがって、術後9日目で大量出血するのは非常に稀な出来事です。

 

疑問点1 出血箇所は子宮の右上の大動脈との記載

 帝王切開では、大動脈を触ることはありません。子宮の裏に溜まった血液を吸引洗浄しますが、いわゆる外科的な処置はしません。外傷でないとすれば、血管の脆弱性による大動脈瘤あるいは大動脈乖離ですが、その場合には次の疑問が浮かびます。

疑問点2 IVRで落ち着いたとの記載

 大動脈など太い血管からの出血は、IVR(塞栓物質)による止血はできず、開腹手術が必要になります。大動脈瘤あるいは大動脈乖離の場合にも開腹手術が必要です。

疑問点3 大量出血との記載

 大動脈からの出血であれば腹腔内出血であり、膣からの出血はありません。

 

したがって、膣からの出血があり、IVR(塞栓物質)による止血が可能だったことから、大動脈ではなく「子宮筋層のどこかの血管」からの出血だと思います。そのようなケースは、私も大学病院勤務時代に2回(帝王切開と経膣分娩が1回ずつ)ほど経験しています。出血の原因は不明ですが、止血していた部分のカサブタが取れてしまった、隠された傷の部分から亀裂が広がったなどが推測されます。

 

なお、このQ&Aは、約3週間前の質問にお答えしております。