歯科医に身近な肝炎 | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

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歯科医に身近な肝炎について、順天堂大学医学部公衆衛生学講座客員教授の長尾由実子先生のお話を紹介します。

 

医師協MATE 2024; 340: 12(日本)

要約:B型肝炎とC型肝炎はウイルス性肝疾患であり、日本国内に合わせて200万人の感染者がいると推測されています。どちらも肝炎の慢性化により、肝癌を発症する可能性があります。B型肝炎ウイルスは感染すると体内から排除することはできませんが、感染防止のワクチンがあります。一方、C型肝炎ウイルスには感染防止のワクチンはありませんが、治療薬で駆除することができます。歯科医の針刺しや切創経験は70〜80%もあり、B型やC型肝炎ウイルス感染のリスクが高いのですが、歯科医のB型肝炎ウイルスワクチン接種率は65.8%(2022年)です。60歳以上の歯科医では半分以下、歯科医療スタッフが59.7%と決して高くありません。ワクチン接種率と反比例して、B型肝炎ウイルス感染率が増加していました。B型やC型肝炎ウイルスの感染患者が、感染していることを歯科医に申告するのは60%との調査があります。申告しなかった理由は「歯科医から(全身疾患について)訊かれなかったから」というのが最も多くなっていました。また、C型肝炎ウイルスは肝臓だけでなく、糖尿病、腎臓病、うつ病、口腔粘膜疾患(口腔癌)などを引き起こすことが知られています。

 

解説:歯科医も、自らの身を守るために、医師と同様に感染症対策が必要ですが、その啓蒙が進んでいないように思います。また、歯科医は口腔内ケアの専門家ですが、歯科医の役割として、身体全体の健康を意識することにも注意が必要だと感じました。私も定期的に歯科口腔ケアのために歯医者さんを訪れますので、歯医者さんのお仕事に感謝しています。だからこそ、感染予防策をしっかりして頂けたらと思います。