めまいについて、横浜市立みなと赤十字病院、めまい・平衡神経科部長の新井基洋先生のお話を紹介します。
医師協MATE 2023; 339: 7(日本)
要約:2009年めまいの国際会議において、新たに「不安定性めまい」が追加され、現在下記の分類になっています。
①擬似運動感覚あり
回転性めまい:目が回る(ぐるぐる)
非回転性めまい:傾いている、流れている感じ
②浮動性めまい:浮動感、浮遊感(ふわふわ)
③不安定性めまい:ふらつき
めまい疾患の中で最も多いのが、良性発作性頭位めまい症(BPPV)で、50〜70代の女性に多く、右側に多くみられます。その原因は、加齢や睡眠時の頭の向き(いつも同じ向きで寝ること)により耳石が剥がれて三半規管に入り込むことで起こり、起床時や就寝時に起こりやすいものです。確定診断は耳鼻科で行いますが、次の4つの問診の総合得点が2点以上の場合に、BPPVを8割の確率で診断することが可能です。
1 回転性めまい +1
2 寝返りでめまいが誘発される +1
3 めまいの持続は5分以内 +2
4 片側の難聴、耳鳴り、耳閉感を伴う ー1
BPPV治療は、頭を動かして、三半規管内に入った耳石を元の場所に戻す「イプリ法(耳石置換法)」を行います。成功率は1回で80%、4回で92%です(患者さん自身でも実施可能)。同じ姿勢で寝ないこと、仰向けに寝る時は頭を高くすることが予防策になります。
解説:内耳の中には平衡感覚を司る三半規管と耳石器があり、耳石器内には直径1μmの耳石が1万個あり、石の移動によりバランスを取る働きがあります。耳石は新陳代謝により新しいものに入れ替わっていますが、加齢とともにもろくなり、剥がれやすくなります。小さな石の移動によってバランスを取るのは、高層ビルの屋上に水のタンクを置くことで地震の際に逆向きにバランスを取るのと似ています。人間の身体も結構単純な仕組みで出来ている一例です。興味深く読ませていただきました。