世界のドナー卵子&代理母事情 | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

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生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

世界のドナー卵子&代理母事情についてのまとめを示します。

World In Vitro Fertilization Units 2012
         ドナー卵子   代理母
アジア、オセアニア
日本       営利禁止    未認可
韓国       営利禁止    方針未決定
中国       営利禁止    禁止
台湾       営利可     禁止
シンガポール   営利禁止    禁止
ベトナム     営利禁止    禁止
タイ       方針未決定   方針未決定
マレーシア    方針未決定   方針未決定
フィリピン    方針未決定   方針未決定
インド      方針未決定   営利可    (ヒンズー教)
イスラエル    営利禁止    営利禁止   (ユダヤ教)
ヨルダン     方針未決定   方針未決定
トルコ      禁止      禁止     (イスラム教)
オーストラリア  営利禁止    営利禁止、未認可
ニュージーランド 営利禁止    営利禁止、未認可

ヨーロッパ
ノルウェイ    禁止      禁止
スエーデン    許可      禁止
フィンランド   営利禁止    禁止
ベルギー     営利禁止    方針未決定
オランダ     営利禁止    営利禁止
デンマーク    営利可     営利禁止、未認可
イギリス     営利禁止    営利禁止
フランス     営利可     禁止
ドイツ      禁止      禁止
ギリシャ     営利禁止    営利禁止
オーストリア   禁止      禁止
イタリア     禁止      禁止     (カトリック)
ポーランド    ?       禁止
スイス      禁止      禁止
クロアチア    方針未決定   方針未決定
ポルトガル    方針未決定   方針未決定
スペイン     営利可     未認可
ウクライナ    ?       営利可
ラトビア     許可      禁止
ロシア      営利可     営利可
スロベニア    営利禁止    禁止
ルーマニア    方針未決定   方針未決定
チェコ      営利禁止    方針未決定
ハンガリー    営利可     許可

北米、南米、中米
アメリカ     方針未決定   方針未決定
カナダ      営利禁止    営利禁止、未認可
アルゼンチン   方針未決定   方針未決定
ブラジル     方針未決定   方針未決定
コロンビア    方針未決定   方針未決定
エクアドル    方針未決定   方針未決定
ペルー      方針未決定   方針未決定
ウルグアイ    方針未決定   方針未決定
ベネズエラ    方針未決定   方針未決定

アフリカ
エジプト     方針未決定   方針未決定
モロッコ     方針未決定   方針未決定
南アフリカ    方針未決定   方針未決定
チュニジア    禁止      禁止

解説:例外も多々ありますが、宗教的背景や歴史的背景を考慮すると理解しやすいと思います。また、方針未決定とは、実施可能な状態を意味します。日本では、法的に禁止されているわけではなく、法整備が整っていません。最近報道されましたように、民間団体「OD―NET」が非営利のドナー卵子登録を始め、限られた施設での実施をするとしています。アメリカはとりあえず全て可能にして、あとで裁判で決めるというやり方です。ロシアとハンガリーは全てOK、ヨーロッパは各国の事情があり様々なので、できる国へ移動して行っているようです。

参考資料(原文のまま)
胚提供による生殖補助医療に関する見解 平成16年4月 日本産科婦人科学会
 わが国には現在まで生殖補助医療に関し法律やガイドラインによる規制はなく,生殖補助医療は日本産科婦人科学会(以下本会)の会告に準拠し,医師の自主規制のもとにAIDを除いて婚姻している夫婦の配偶子により行われてきた.しかし,平成12年12月の厚生科学審議会・先端医療技術評価部会・生殖補助医療技術に関する専門委員会の『精子・卵子・胚の提供による生殖補助医療のあり方についての報告書』において,「第三者からの精子・卵子または胚の提供を受けなければ妊娠できない夫婦に限って,第三者から提供される精子・卵子による体外受精および第三者から提供される胚の移植を受けることができる」と報告され,本件は現在,厚生科学審議会生殖補助医療部会で審議が続いている.この胚の提供による生殖補助医療に関する議論により,わが国の胚提供による生殖補助医療の是非の問題に対し,社会的関心が高まった.
 胚提供による生殖補助医療は生まれてくる子とその家族のみならず社会全体にとって,倫理的および法的な種々の問題を内包していると考えられる.このため本会は平成13年5月,胚提供の是非について本会倫理審議会に諮問し,平成14年6月4日に答申を受けた.これをもとに本会倫理委員会は本会会員からの意見募集を経て,以下の見解をまとめた.
「胚提供による生殖補助医療に関する見解」
1. 胚提供による生殖補助医療について
 胚提供による生殖補助医療は認められない.本会会員は精子卵子両方の提供によって得られた胚はもちろんのこと,不妊治療の目的で得られた胚で当該夫婦が使用しない胚であっても,それを別の女性に移植したり,その移植に関与してはならない.また,これらの胚提供の斡旋を行ってはならない.
2. 胚提供による生殖補助医療を認めない論拠
1) 生まれてくる子の福祉を最優先するべきである
2) 親子関係が不明確化する