本論文は、胚移植当日の女性の主観的健康感が、妊娠成績に関連するかどうかについて検討したものです。
F S Sci 2026; 7: 346–356(中国)doi: 10.1016/j.xfss.2026.05.005
要約:2024〜2025年に一つの不妊センターで凍結融解胚移植を受けた800人の女性を対象に、移植当日に「身体的健康」「精神的健康」「社会的健康」「総合健康」の4領域からなる自己評価健康尺度(48項目)を用いてアンケート調査を実施しました。各領域のスコアを三段階(良好・普通・不良)に分け、妊娠成績との関連を、年齢・BMI・学歴・婚姻状況・経済状況・不妊原因・移植胚数・移植方法・移植日のプロゲステロン値などの交絡因子で調整して前方視的に検討しました。不良と回答した割合は、身体的健康46.3%、精神的健康39.4%、社会的健康34.3%、総合健康36.1%でした。結果は下記の通り(すべての項目で統計学的有意差を認めませんでした)。
良好群に対する不良群の調整オッズ比(95%信頼区間)
臨床妊娠率 着床率 流産率
身体的健康 1.06(0.73〜1.54) 0.95(0.68〜1.31) 0.75(0.31〜1.86)
精神的健康 0.91(0.62〜1.32) 0.85(0.61〜1.19) 1.78(0.69〜5.02)
社会的健康 1.11(0.76〜1.63) 0.98(0.70〜1.37) 1.23(0.52〜2.99)
総合健康 1.16(0.79〜1.71) 1.01(0.72〜1.43) 1.31(0.51〜3.56)
また、年齢やBMIで層別化したサブグループ解析でも、有意差は認められませんでした。
解説:本論文は、移植当日の体調や気分の自己評価は妊娠成績とは関係しないことを示しています。つまり「体調が悪いから今回の移植はうまくいかないかもしれない」と思い悩む必要はありません。移植の成否は胚や子宮内膜といった生物学的要因によって決まるので、身体の体調とは異なります。