『デフレ脱却なくして消費増税なし』
1、デフレ経済下での消費増税は断固として認められない
私が譲れない一線は、デフレ経済下の異常な内需の落込みと人件費の下落を改善せずに、安直に増税を行うことは断固認められないということである。
められないということである。
民主党政権時代に、私はデフレ脱却議連を会長として立ち上げ、わが国の経済を復活するために本当に必要な政策は何かを大いに議論した。
当時、この議論には自民党から安倍晋三現首相が参画され、大胆な金融緩和や、機動的な財政政策という、いわゆる『アベノミクス』に反映されることとなった。
また消費増税が議論された際には、私が、
『景気弾力条項』を強硬に主張し、実際の法案に盛り込まれることとなった。
前回の総選挙では、安倍首相がこの「景気弾力条項」を利用し増税延期を決めたことは広く知られている。
私のこうした活動の根幹には、日本経済及び庶民力が落ち込んでいる背景に、デフレスパイラルを中心とする構造があるという認識があった。
そしてこうした構造を打破するためには、
まさにこの長期にわたるデフレからの脱却が不可欠であるという確信を持つに至った。
2、非正規雇用の増加と少子化
翻って、
高度成長を成し遂げた日本において、その原動力となった分厚い中間層
の役割を考えてみたい。
彼らは終身雇用制と年功序列による賃金上昇を信頼し、また将来の物価上昇を見込み、その所得を消費に振り向けた。
それに加え、将来的な経済成長に対する期待は、多くの人にとって、結婚し家族を持つという選択肢を魅力あるものとした。
家族を守るために働くことは、当時の日本国民全体の労働生産性に対し、極めて好ましい影響を与えたことは想像に難くない。
他方、現在の日本では被雇用者に占める非正規雇用の割合が上昇し、その数字は40%に迫るものとなっている。
確かに、こうした雇用形態を自発的に求める労働者も存在している。
しかし、安定した正規雇用を望んでいるにも関わらず非正規雇用を甘受している方たちの声が非常に多く聞こえるのも事実である。
関連して、政府の統計によれば、非正規雇用労働者の有配偶率(配偶者を持つ割合)は、正規労働者のそれの半分であるという。
私はここに、
現代日本の最大の社会問題である少子化と、最大の経済問題であるデフレの大きな相関性を見出すことになった。
3、デフレを促進する増税
言うまでもなく、デフレは貨幣の価値を高め、物価を下げる機能を持つ。
したがって物価の下落がコスト削減への過剰な圧力となり、結果として労働に対し支払われる賃金を下げる。
とりもなおさず、これは、デフレが消費の主たる担い手である庶民の手取りを減少させることを意味する。
同時にこうした人件費の圧縮を考えたときに、正規雇用労働者に対して割安な非正規雇用労働者の求人の増加との関連性に思いを到らせるのは、ごく自然な感覚ではないだろうか。
デフレは消費者に対し、できるだけ消費を回避し貨幣を持ち続けることこそが、最善の経済選択であることを示唆する。
こうしたデフレマインドこそが、まさにデフレスパイラルを引き起こす最大の問題である。
また、デフレが克服されない中での増税は、税収を増やすどころかさらなるデフレを促す。
増税は市場に出回るお金の総量を減らす政策であり、必然的に貨幣の価値を高めることになるからである。
さらに我々のこれまでの経験は、増税が、中長期的にはむしろ国家の歳入を減少させることになりかねないことをも示唆する。
4、財政出動を伴わないデフレ脱却政策
先にも触れたが、新自由主義的な経済政策の下で、あまりに安くなり過ぎた商品やサービスの価格のしわ寄せが、特に労働者に強く及んでいる。
私たちは行き過ぎた需給バランスを直し、正常な人件費を取り戻す必要がある。
こうした異常な需給バランスの是正は、すなわち内需を正常に
戻すことを意味する。
我々が今進めるべきは、下降指向の強すぎる商品やサービス価格の安定・上昇と、それに伴う労働者の給料の増加を促す経済・社会政策である。
同時に国家財政を鑑みれば、特に重要なのは、財政出動を伴わないデフレ脱却政策の創成である。
例えば、地方ごとに時限的な容積率の緩和を断続的に行うことよる、地方経済の活性化と建設需要の喚起、そしてそれに伴う賃金上昇政策。
また、公共事業における現場労働者の賃金を設計労務単価の90%以上にすることを、元請け企業に義務付ける公契約法の実現などが考えられる。
我々が、国会・政府が、第一に取り組むべき仕事は、こうした賃金の上昇を導く、デフレ脱却政策を実現である。
松原仁