今、学ぶべきビジネスモデル としての 〈創造的破壊〉明治維新

 

≪2/3≫ 今、学ぶべきビジネスモデル としての 〈創造的破壊〉明治維新

 

 

 

 

4、現代に求められる創造的破壊

 

 

日本の伝統的な創造的破壊


 このような日本の創造的破壊のエネルギーの原点には、建国の起源にも関わる伊勢神宮において二十年に一度行われる式年遷宮にも見られる、日本の本質があります。


 永く日本の神話と伝統の中心であり続けてきた伊勢神宮においては、その中核である内宮や外宮が二十年に一度壊されて新しく造り替えられます。

 伊勢神宮が日本の社会や伝統において持ち続けてきた精神性や意義を考えると、この創造的破壊の意義は言葉では語れないほどのものです。

 

 私は、式年遷宮は、日本が古代より持ち続けてきた創造的破壊のDNAを象徴するものと考えています。こういった例は、他にはあまり無いのではないでしょうか。

 古代アテネがアクロポリスの神殿を自発的に動かしたなどということはないのです。
 

 今日のわが国の政治に最も求められるのは、この創造的破壊です。

 創造的破壊は、透徹した野党的精神に基づいて初めて可能になります。そもそも、既存の枠組みを維持するように設計され動いている官僚機構が自らを創造的に破壊することは、その元来の本質を考えると、まず無いでしょう。

 

 明治維新においては、それまでの幕藩体制では登用されなかったような人材が多く活躍した明治政府であったがゆえに、統治機構の創造的破壊と封建的階級の創造的破壊が可能になりました。

 

 

日本人の持つ創造的破壊のDNA

 

 もちろん、その根本に日本が元来持つ創造的破壊のDNAがありました。

 

 フランスでは革命により時の国王ルイ十六世やマリー・アントワネット王妃のような王侯貴族が断頭台の犠牲となりましたが、そのような大きな変革をもたらした革命の後もなお封建的階級の残滓(ざんし)があると聞き及びます。

 

 私は、大胆な創造的破壊のDNAを持つ日本は、大きな革命を経験したフランスよりも、より一層徹底した創造的破壊を行い得るとすら思うのです。

 

 

創造的破壊としての機構改革


 今日、明治維新が実現した二つの創造的破壊を再び行い得るかを問われています。

 かつてと同じように、瀬戸際にある今の日本では、この事が今後繁栄を取り戻すか没落に向かうかを決めるのです。

 

 明治時代とは異なり、現在の行政機構は、あまりに硬直化して新しい時代に柔軟に対応できません。また、資産格差の拡大による新しい階級は、日本人の労働意欲を大きく削いでいます。

 その証拠に、すでに申し上げたとおり、かつて世界1位と言われた労働力生産性が世界19位にまで落ち込んでいるのです。


 明治維新に学び、現在の行政機構を創造的に破壊するとすれば、戦後70年の長きにわたり使われてきた現在の古い行政区割りを、科学技術の進歩や交通網の発展や新しい環境等を踏まえた新しい区割りに変えることが第一の課題です。

 

 これにより、大きな組織的なエネルギーの発揚につなげることができます。安定した時代にはなかなかできないこうした統治機構の大改革に果敢に挑戦したのが、橋本市長の大阪都構想でした。


 

伝統的保守精神を持った野党の必要性

 

 資産格差による硬直した階級を創造的に破壊するための議論も行われています。

 

 例えば、戦後GHQにより行われた農地改革に匹敵するような、相続時の資産課税強化が慶応大学の夏野教授により提案されています。こうした議論は、大いに傾聴に値するものです。


 日本における創造的破壊の伝統は、伊勢の式年遷宮にも見られるように、古来より日本のDNAにありました。

 私は、日本の本当の保守と言うものは、元来こうした大胆な改革を行いうるものだと考えています。

 

 今日本に求められるものは、日本の伝統的保守の精神を持った野党です。

 今や、わが党がそうした日本の伝統的保守の精神を根本とした野党になることこそが、歴史がわが党に求める歴史的要請であると考えます。
 

 

衆議院議員 松原仁