安倍政権でなぜ拉致問題解決が進まないのか?

 

 

 拉致は安倍政権ののど元に刺さった、解決の見通しのないテーマである。

 そもそも、私はこの問題は北朝鮮において、チャンソンテクが金正恩に殺された直後がチャンスであると主張した。

 なぜならば、アメリカのブッシュ大統領が北朝鮮を《悪の枢軸》と非難したときに北朝鮮は恐れ、アメリカの弟分の国家である日本に対して近づこうとし、拉致問題解決の第一歩ともいうべき、5人の被害者の帰国が実現したからである。

 

「激動する南北情勢の中で拉致問題を考える」、拉致議連幹事長・元拉致担当大臣としてあいさつ
(平成28年12月9日)

 

 

 

 

 外交的な圧力によって北朝鮮を圧迫することが一つの有利な条件であることはわかっている。当然、チャンソンテク殺害によって中国と北朝鮮の関係は悪化し、中国に対するもう一枚のカードとしての日本に近づこうとする意欲が北朝鮮に生まれることは容易に想像できた。
 

 この時に思い切って政治的に動くべきだったと考える。しかしそれを拒んだのが外務省かどうかはわからないが、結局、そのチャンスは失われた。

 

 

拉致問題解決に向けて3つの政策提言

 

 

 そもそも拉致被害者救出は、人質救出作戦と類似している。日米の農産物交渉に中心の役割を担うのは農林水産省である。自動車交渉で、中心的役割は経済産業省が担う。

 その意味で、人質救出であれば、外務省ではなく警察中心に作られた拉致対策本部がその交渉の中心的役割を担うのが当たり前である。しかも、外務省のこの問題に対するサボタージュぶりは目に余るものがあるとすらいえる。

 

 

 次に担当大臣の問題がある。この問題について従来から関心を持ち、被害者家族と琴線を交らわせている議員が大臣でなければ、北朝鮮は本気では動かないと考える

 私が前任者から大臣職を引き継いだ時に北朝鮮の動きがにわかに従来より真剣になったと記憶している。

 北朝鮮は相手を見て行動を変える国家である。その人間が、過去、国会議員であればだれでも参加できる拉致議連に参加していたか、そして被害者家族会や救う会と連携を過去にもっていたかなどが彼らの判断材料となる。

 

 

 次に、以前から繰り返し何度も主張しているが、ストックホルム合意の破棄である。
 この合意を破棄しない限り、日本国および日本人が本気で怒っていると、彼らは感じないであろう。我々は、本気で怒っているのであるから、すぐさま合意を破棄すべきである。

 

 

 こうした一連の動きは、ある意味で日本の外務省のメンツをつぶすことになるかもしれない。しかし拉致被害者を本気で助けようとするならば、この3つは最低限の必要条件であろう

 

  1.  つまり交渉主体を外務省から警察主体に完全に変えること。
  2.  担当大臣を中山恭子議員や私のように、この問題を専門に取り扱ってきた人間に替えること。 私は野党にいるが、中山議員は政党は異なっても議会での行動は安倍自民党とほぼ同じであり、大臣として十分に検討に値する。
  3.  そして、3つ目がストックホルム合意を破棄することである。
     

 その上で、かつてのチャンソンテク殺害のように、外交的に北朝鮮が圧力を加えられる事態が生じれば、さらに解決にむけて進むであろうと考えられる。

 

 

衆議院議員 松原仁