拉致問題解決のために

 
 一月二十八日、虎ノ門において、拉致救出緊急集会が開催された。私は、横田夫妻、増本さん、飯塚さんなどの被害者家族会の方々と、救う会全国協議会会長西岡力氏、また議連関係の中山恭子さんなどと参加した。
 私と中山議員は同じ認識をかねてから共有している。つまり、ストックホルム合意を破棄しなければ拉致問題は解決に向かって再出発しない、という確信である。
 
 
 そもそもストックホルム合意は、拉致問題を遺骨問題や日本妻問題と同列に置くこと自体に北朝鮮ペースがにじみ出ていたものである。合意後の宋日昊氏の記者会見でのはしゃぎ方を見れば、まさに北朝鮮の思うつぼで合意がなされたとの印象を、多くの人が強く持たれたであろう。その時から、私や渡辺周議員、中山恭子議員はこの合意はとんでもないと警告を発してきた。
 
 
 その後、虎ノ門で行われた家族会・救う会・拉致議連合同の会合において、外務省がピョンヤンで会合を持っても時間稼ぎを図る北朝鮮の国際社会に対するアリバイに使われるだけであるという、派遣すること自体に対する反対一色の意見となった。
 
 
 ストックホルム合意破棄で日本の心底からの怒りを北朝鮮に伝える!怒りをカタチに!・・・
 
 
 
 事実、伊原局長はピョンヤン訪問後、一年経過しても何らも成果を上げなかった。我々の心配は的中したのである。
 そもそもチャンソンテク処刑後の北朝鮮は、中国に強く圧力を加えられた。ブッシュによって「悪の枢軸」と呼ばれたときの圧力を超える程のものである。当時の段階では、その孤立を打ち破るために、日本に接近する戦略をとったといえる。丁度、ブッシュ大統領の「悪の枢軸」発言の後に、北朝鮮が日本にアプローチした時と同様である。
 

 これは北朝鮮と拉致交渉を行うにあたって極めて有利な状況のはずであった。しかるに、そこで日本の外務省は、本気でこの問題を解決しようとしない情熱のなさを露呈するかのように、相手の言いなりになってストックホルム合意を結んだのである。
 これは結論的に言えば、日本人が拉致解決のことで北朝鮮に心底怒っているということが、北朝鮮に伝わっていないということである。


 なぜならば、北朝鮮のセンスでいけば、交渉に失敗した当事者は完全に失脚するが、北朝鮮側からみると日本側の担当者はそうした降格にもなっていない。しかもストックホルム合意は破棄されていない。これでは日本が怒っているといっても説得力はない。
 もちろんストックホルム合意を破棄すれば、日本側の担当省庁と担当者はメンツがつぶれるであろう。しかしこの交渉失敗を考えればそれくらいの罰は当然であろう。
 よくパイプがなくなるというが、その心配はないと断言しうるし、このパイプはすでにパイプとは言えない代物である。 
 
 
 かつて私が担当大臣の時に、あるエージェントが、「松原先生、私以外の北朝鮮とのパイプを切ってください」と言ってきた。私は「あなたのパイプだけで成功するかどうかはわからないのでそれは無理」と答えた。結局、彼はその後も連絡をしてき続けた。北朝鮮にとって、日本とのパイプは最も利権的メリットを感じるものであり、これに参加したい政治的、経済的立場の官僚等はおびただしく存在する。
 

 こうした状況の中、一刻も早いストックホルム合意の破棄によって、日本が心底怒っていることを示し、北朝鮮との実質の交渉を、これまでの外務省主体の交渉から、警察を中心にし、主体とする交渉に切り替えるべきである。
 
衆議院議員 松原 仁