松原委員 きょうは、特定船舶の入港の禁止に関するいわゆる承認を求めるということの案件にかかわって御質問したいと思っております。
 まず最初に、安保理決議二千九十四号というものが、極めて最近でありますが、安保理で決議をされたわけでありますが、この十六項の内容についてお伺いいたしたいと思います。

新美政府参考人 御答弁させていただきます。
 今先生から御指摘がありました安保理決議二〇九四号主文の十六につきましては、決議の第一七一八号を初めとする関連決議により供給、販売、移転または輸出が禁止されている品目を積載すると信じる合理的根拠があることを示す信頼できる情報がある場合に、北朝鮮を原産地、目的地とする貨物または北朝鮮及びその国民等が仲介、促進する貨物について、自国の領域内での貨物検査を実施することを加盟国に義務づけているというものでございます。
 これは、従来の決議の第一八七四号で要請にとどまっていた貨物検査を義務化する趣旨で設けられたものでございまして、かつ、検査を行う対象も、北朝鮮を原産地また目的地とする貨物から、北朝鮮及び北朝鮮人等が仲介、促進する貨物に拡大されているということでございます。

松原委員 今御指摘があったように、義務化をするということにおいて、かなりこれは北朝鮮のさまざまな活動に対しての制裁的な効果はある、このように考えているわけであります。
 日本のように、拉致問題といった日本固有の問題も含めて、北朝鮮に対して譲歩を迫っていかなければいけない国家としては、この二千九十四号というのは極めて重い国連決議であるというふうに認識をいたしております。
 次にお伺いしたいのは、この二千九十四号の十六項について、この義務を履行するのはどこの機関になるかということについてお伺いをいたしたいと思います。

海部政府参考人 松原議員にお答えをいたします。
 先ほど申し述べました安保理決議第二千九十四号第十六項の実施についてでございますけれども、現在、我が国が、安保理決議に関して我が国当局が実施する北朝鮮関連の貨物の検査等について定める貨物検査特別措置法を有しており、その法律のもとで、海上保安庁、税関といった我が国国内当局が実施をするということになってございますが、一方で、この二千九十四号の採択を受けた今後の対応ぶりにつきましては、御指摘の第十六項を含めまして、現在、関係省庁間で精査、検討を進めている状況にございます。

松原委員 精査、検討を進めているということでありますが、具体的に、いつごろをめどにそれが検討され、そして決定されるのか、この段階でわかっていることを知らせていただきたい。

海部政府参考人 お答えいたします。
 委員御指摘のとおり、非常に重要な内容を含む安保理決議であるというふうに政府全体として認識をいたしております。したがいまして、今後、できるだけ速やかに、先ほど申し述べました精査、検討についての結論を得ていきたいというふうに考えております。
 現時点で申し述べさせていただくことはこの程度でございますが、何とぞ御了解を賜れば幸甚に存じます。
 以上でございます。

松原委員 これはスピード感が大事だと思っております。
 先ほどの鷲尾委員の発言の中にも、拉致被害者は大変な時間との闘いの中で、離された肉親との出会いを求めているということが指摘されているところであります。したがって、こういった二千九十四号のようなものが決議されたときに、やはりこれに対して即座に対応するという努力を、日本政府は、拉致問題解決という観点からも、どんなにやってもそれはやり過ぎることはない、このように私は思っているわけであります。
 外務省にもお伺いしたいんですが、そもそも、この二千九十四号の仮訳がまだ出ていない。もちろん、さまざまなプロセスというものは必要かもしれませんが、拉致問題を抱える我が国において、これがいまだに仮訳すら出ていないというのは極めて遺憾だと思っておりますが、ちょっと釈明か何かできればこの場でおっしゃっていただきたい。

新美政府参考人 お答え申し上げます。
 先生まさにおっしゃいましたとおり、この決議の二〇九四号、日本との関係でも大変大事な決議だと思っております。
 決議が通りましてから、外務省として鋭意、和訳、仮訳をつくってまいりました。もちろん、先生おっしゃるとおり、迅速にやる必要があるということはおっしゃるとおりでございますが、同時に、正確に訳する必要もあるということで努力してまいりました。
 それで、遅いというお叱りを受けて、そのとおりではございますけれども、ちょうど昨日、やっと仮訳が、正式に決裁もとり、できまして、外務省のホームページにきのうの夕方アップしたところでございまして、本日の官報に掲載する予定でございます。

松原委員 私がきのう質問通告を昼にしてから、鋭意仮訳をしたんだろうと思いますが、そういうことじゃいかぬわけですね、これは。そういうことではいけなくて、やはりきちっとやらないと。
 特に今回は、きょう、船舶入港禁止の、我々の北朝鮮に対する制裁のこれがもう一回審議されて延長されようとするときに、この二千九十四号というのは明らかに、内容的にその延長線上にある、ある種、追加制裁的な色彩まで持つわけですよ。それを、きのうの段階で仮訳がありませんでしたと私のところに来て、きょうになってできました。それは結構ですよ。しかし、それにしても、もうちょっとこの辺は外務省も真剣にやってもらいたいと思っております。
 ところで、この二千九十四号十六項について、履行する法的根拠は整っているのか、お伺いいたします。

海部政府参考人 お答えをいたします。
 先ほど私の答弁で申し上げたとおり、現在、我が国が、安保理決議に関して我が国当局が実施する北朝鮮関連の貨物の検査等につきましては、貨物検査特別措置法というものがございます。そのもとで、海上保安庁、税関といった国内当局が所要の措置を実施してきているということでございます。
 この二千九十四号を受けた措置ということにつきましては、先ほどの繰り返しになりますけれども、今後の対応ぶりにつきまして、関係省庁間での精査、検討作業を行っているということでございます。

松原委員 当然、そうすると、この履行する体制についても、今、整っているのではなくて検討中である、こういうことですか。

海部政府参考人 現行の貨物検査特別法のもとでは、申し述べましたように、国内の関係当局、法執行機関の緊密な連携によって、しっかりとした貨物検査の体制は整ってございます。
 二千九十四号のもとで、これが果たして適切なものとして引き続き実施できるものなのかどうかという点について現在検討を進めている、至急、この検討作業に結論を見出していきたいということを、関係省庁とも今確認をしてやっているところでございます。

松原委員 太田大臣、今このやりとりを聞いていただいて、時間との闘いの拉致問題の解決ということが言われております。そして同時に、この国連の二千九十四号が、今の議論で明らかなように、冒頭、その内容についての開陳がありましたが、まさにこれは特定船舶入港禁止法をさらに広げる形の、あえて言えば、追加制裁的な効果すら持つ国際的な取り決めであるということも、恐らく認識の中で明らかになっていくだろうと思います。
 しかし一方において、これに対して、履行する整備状況、法的根拠といったものについては、鋭意努めているということですが、鋭意努めているということでは、私は、例えば拉致被害者の皆さん、本当に一日一日が命との闘いの環境にある皆さんは、そんな安直なことでは納得できないと思っているわけであります。
 これに関して、やはり太田大臣としては、内閣の一員として、早い段階でというよりは、もうできればきょうこの段階で、この日ぐらいまでにはと期限を区切ってこういったものに対する日本の国内法を整備し、その体制をつくるんだ、こういった御決意を開陳していただきたいと思っております。その決意をお願いいたします。

太田国務大臣 私は、二〇九四号というものが決議されて、貨物の検査ということが義務化される、そして、あらゆる国がそこに集中して合意を形成するという態勢になったということは、極めて重要なことだというふうに思っています。
 そういう意味では、訳ができているとかいないという論議がここでされているということ自体が大変遅いし、拉致問題を抱えていて、そして非常に近接しているというところからいっても、また、松原先生がずっとこの問題に携わって、先頭を切ってやってこられたということからいっても、余りにも遅いし、その動きが、直ちに日本がまずこういうふうにしたという、体制を整えるということを発信するということ自体が極めて重要なことだというふうに私は思っています。
 答弁としては、関係省庁で法令等の改正の要否を含む検討を開始しているところですというのが答弁ですが、その中の気持ちとしては、しっかりした体制を早急に、いつ何どきとはきょうここで発言できませんけれども、急いで体制を整備するようにしたいということだけは申し上げたいと思います。

松原委員 この二千九十四号の十七項の内容についても、外務省から説明いただきたいと思います。

新美政府参考人 御答弁申し上げます。
 今先生から御指摘ありました安保理決議二〇九四号の主文十七でございますが、この主文十七は、旗国の同意があるにもかかわらず貨物検査を拒否する船舶や、そのような同意の得られる見込みのない北朝鮮の船舶に対して、当該船舶への貨物検査のために必要とされる場合や緊急事態の場合を除き、自国への入国を禁止する措置をとることを加盟国に義務づけております。
 これは、本来、決議で禁止された品目を運搬する疑いのある船舶につきましては、主文十六に基づき貨物検査を確実に実施することが重要でございますけれども、検査を拒否する船舶につきましては、これは自国への入港を拒否することにより同船舶のそれ以上の航行を困難にし、もって品目の移転禁止という貨物検査の主たる目的を達成することを狙いにしているものと考えております。

松原委員 これもまた当然、その法的根拠、入港を拒否する法的根拠を現在の特定船舶入港禁止法と別に考える、こういう認識でよろしいでしょうか。

海部政府参考人 御答弁いたします。
 二千九十四号の採択を受けた今後の対応ぶりにつきまして、既に存在するいわゆる特定船舶入港禁止法のもとで行われている措置、我が国がとり得る措置といったものとの関係といったことを整理しながら、二千九十四号のできるだけ速やかな実施に向けて、所要の措置をスピードを上げて検討してまいりたいというふうに考えております。

松原委員 昨年の八月に、貨物検査特措法で海保と税関が立ち入りをしたということが言われました。きのうも官房長官の午後の記者会見で、このことに触れた発言もあったようであります。
 私としては、この八月以来、なぜこれは長いことそのまま余り表に出てこなかったのかということも極めて疑問を感じていたわけでありますが、まず事実関係をお伺いしたいと思います。

石原政府参考人 お答え申し上げます。
 昨年八月、東京港に寄港いたしましたシンガポール船籍の船から陸揚げされました貨物に、中国・大連経由で北朝鮮から輸送された核関連物質と疑われる貨物がございましたことから、貨物検査特別措置法による必要な検査に税関が着手をいたしまして、その結果、当該貨物が、これは五本ございましたが、同法により核関連物質として規制されておりますアルミニウム合金の棒であるということを確認いたしたものでございます。

松原委員 きのうの官房長官の記者会見もあったわけでありますが、昨年の八月ということは、八月は八月ということでよろしいですか。

石原政府参考人 はい。八月でございまして、正確に申し上げますと、入港いたしましたのが八月の二十二日、検査に着手いたしましたのが八月の二十三日からでございます。

松原委員 なぜ発表にこれだけの時間がかかったのかということに関して御説明いただきたいと思います。

石原政府参考人 お答え申し上げます。
 当該貨物が、貨物検査特別措置法の規制対象でございます核関連物質であるかどうかということにつきまして、具体的に申し上げますと、その規制対象の物質であるかどうかということと、それが北朝鮮を仕出し地とするものであるか、この二点につきまして慎重に検査を重ねてきたところでございまして、結果として相当な日数が経過したということでございまして、恐縮に感じておるところでございます。

松原委員 きょうは時間がないので、ここを余り突っ込んだ議論をするということにはなりませんが、八月で、今三月ですよね。半年以上というのは、先ほどの国連決議の二千九十四も含めてですが、やはりこういった制裁的なものはスピード感というのが大事なんですよ。
 今後も、こういった案件はどうしてもこれぐらいの日数がかかるということですか。ちょっとお伺いしたい。

石原政府参考人 お答え申し上げます。
 今後どのような案件が発生するか、具体的な中身によりけりと存じまして、我々といたしましては、その法律の該当要件を満たしているかどうかということにつきましてはこれからも慎重に検査してまいりますが、先生御指摘のとおり、当然、なるべく早く検査を済ませるということに努力してまいりたいと思います。

松原委員 これは太田大臣の所管になるのかどうかわかりませんが、こういったものもやはりスピード感を持ってやらないと、一方においては時間との闘いの拉致被害者御家族がいるという中で、法のさまざまな整備も、こういった調査、審査にしても、それは間違っちゃいけませんよ、しかし、半年、七カ月というのでは、これは制裁の効果そのものを疑われることにもなりかねないので、こういったものに内閣としてスピード感を持って取り組むということを、内閣の一員である太田大臣、この場でおっしゃっていただきたい。

太田国務大臣 昨年の八月二十三日ということからいきまして、これは、大変時間がかかり過ぎだというふうに思います。
 これは税関の方になって、私の直接ではありませんけれども、内閣としてこうしたことには敏感に対応して、それはしっかり調べることは調べなくてはいけませんが、こうしたことでも、迅速に事態を明確にしていくということ自体が、実は北朝鮮に対しての我々の姿勢を示す大事な点だというふうに思っています。

松原委員 それから、ちょっと話題が広がりますが、やはり拉致被害者御家族の中には、拉致を理由とした制裁というものが今まで発動されていなかったことに対して、拉致、核、ミサイルといいながら、拉致に対しての比重が小さいのではないか、こういった思いもあるわけであります。
 過去、拉致というものを理由にした制裁が行われなかったことに関してどのように考えるか、お伺いしたい。

海部政府参考人 お答えいたします。
 松原先生御案内のとおり、我が国としていかなる北朝鮮措置をとるかにつきまして、拉致、核、ミサイルといった諸懸案に対する北朝鮮の対応や、六者会合、国連安保理等における国際社会の動きを踏まえ、総合的に判断することを基本方針としてきております。
 そのような判断を行う際に、政府としては、北朝鮮が拉致問題について何ら誠実ある対応を見せてきていないということを、当然のことながら考慮に入れているわけでございます。その意味で、拉致問題並びに右に関する北朝鮮側の対応は、我が国が北朝鮮措置のあり方を判断するに当たって、従来から考慮に入れてきておる一つの極めて重要な要素であるというふうに位置づけております。
 この問題が解決されるまでの間、今後とも、そのような位置づけであるということについては変わりはございませんということを申し上げたいと思います。

松原委員 時間がなくなりましたから終わりますが、やはり、拉致を原因にしてやったということはかつてなかった。もちろん、理由に常に入れています。しかし、それは、ミサイル、核のときに制裁強化が行われている。この事実を踏まえたときに、北朝鮮に対して拉致を理由にした明快な制裁が行われないこと自体が、彼らに対して、日本政府は拉致問題に対して本気で解決しようとしているというメッセージを十分に伝えていないのではないか、こんな危惧すら持っております。
 このことを指摘して、私の質問を終わります。



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